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 今日2018年5月25日(金)は、札幌市で開かれている第12回日本エピジェネティクス研究会年会を取材しております。北海道大学大学院理学研究院化学部門教授の村上洋太さんが年会長を務め、昨日(5月24日)午後から始まりました。

 昨日の昼過ぎまでは、この研究会年会の会場(かでる2・7)から数百mのロイトン札幌などで5月23日に開幕した第59回日本神経学会学術大会の発表を聴きました。研究会と学会の話題は、メールの後半にて紹介します。

 今週は興味深いニュースが盛りだくさんです。学生数が7万人で、年間予算は2600億円、オリンピックに輩出した選手数は延べ450人とのこと。日本大学はマンモス校ですね。コンタクトスポーツで戦力になったことはないのでよく分かりませんが、報道の時には「監督と選手」というよりも「指導者と学生」と表現すべきと思っています。

 アカデミア系の取材では、要職である理事の人数や経歴が気になります。

 教育機関ではありませんが、理化学研究所の予算はおよそ年1000億円と聞いています。理事の人数は理事長を含めて合計6人です。

 教育機関の水産大学校水産総合研究センターが統合して2016年4月に発足した水産研究・教育機構の予算は、ただいまウェブサイトにて確認したところ、2018年度の予算は238億円。理事は、理事長を含めて7人。このうち、前身の水産大学校の出身はお1人のようです。水産大学校理事長を務めていた鷲尾圭司さんです。理事長を除く理事6人は、法律で定められた人数の上限です。

 一方、2018年度予算のうち運営交付金が545億円と、理研の529億円を上回る農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の理事の人数は、理事長や副理事長を含めて12人。これも法律の上限です。

 農業・食品産業技術総合研究機構法の第九条2項において「副理事長一人及び理事八人以内を置くことができる」と定められ、また、付則(平成二七年九月一八日法律第七〇号)第五条において「当分の間、理事二人以内を置くことができる」とされているとのこと。12人のうち2人は「当分の間」なのだと納得しました。

 さてようやく、恒例の保健機能食品のアップデイト情報です。

 この1週間では、2018年5月18日(金)に5件 (届出番号:C440からC444まで) 、5月23日(水)に3件(C445からC447まで)、消費者庁が機能性表示食品の届出情報を公表しました。有効な機能性表示食品の届け出は1319件程度になったかと思います。新しい機能性関与成分の届け出は特には無いようですが、宮崎県産のホウレンソウが機能性表示食品になりましたので、紹介します。

 ジェイエイフーズみやざき(宮崎県西都市)の加工食品「宮崎育ちのほうれんそう」が、2018年3月26日付で消費者庁に届け出が受理されました。

 機能性関与成分は「ルテイン」で、「本品にはルテインが含まれている。ルテインは、光による刺激から目を保護するとされる網膜(黄斑部)色素を増加させることが報告されている」旨の機能性表示を行います。販売開始予定日は、来週月曜日(2018年5月28日)と記載されています。

 ただいま検索していて気が付いたのですが、宮崎県内に本社がある企業が届け出した最初の機能性表示食品です。

 ルテインの健康機能は世界中の論文で認められています。ルテインを機能性関与成分とする機能性表示食品は、このホウレンソウが、70件目です。

 届出資料のうち「作用機序」の記載内容を、以下に記録しておきます。以下、引用です。

 ホウレンソウなどから摂取したルテインは脂質ミセルに取り込まれた形で小腸の粘膜細胞から吸収される(1)。吸収されたルテインは、LDLコレステロールなどを運搬するカイロミクロンに取り込まれ(2)、血液やリンパ液により各組織へ運ばれ、眼をはじめ、肝臓、腎臓などに蓄積される(3)-(4)。

 ルテインはいろいろな組織に蓄積されるが、とくに眼の組織では蓄積性が高く、眼におけるルテインの分布は黄斑色素レベル(MPL)や黄斑色素密度(MPOD)の測定から、網膜の中心部黄斑の部分に集中することが示された(5)-(8)。紫外線、あるいは可視光のうちでも青色光は、強いエネルギーを持っていることから光酸化の原因となり全ての細胞が受ける基礎的な酸化ストレスの上に、余分のROS やフリーラジカルを産生させ、細胞にさらなる負担をかける。目のように曝露された組織の細胞は特に光酸化を受けやすく、ルテインなどの網膜色素はカロテノイドの一種であり、その抗酸化作用と青色光吸収能により、光の刺激から目を保護し、目の健康維持に寄与すると考えられる(9)。

(参考資料)
1)J Agric Food Chem. 2006 Oct 18;54(21):7998-8005.
2)J Nutr. 1995 Oct;125(10):2610-7.
3)Lipids. 2005;40:1069-73.
4)「食品機能性の科学」 食品機能性の科学編集委員会編
5)Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 1996 Oct;5(10):823-33.
6)Invest Ophthalmol Vis Sci. 2007 Nov;48(11):5168-77.
7)Prog Retin Eye Res. 2012 Jul;31(4):303-15.
8)Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 1993 Mar-Apr;2(2):139-44.
9)Nutrients. 2013 May 29;5(6):1962-9.

 最後に、研究会と学会の話題も紹介します。

 「エピジェネティクス」とはどのような研究分野と皆さんお考えでしょうか。取材先などにより、定義や範囲がかなり異なることが気になっているのですが、今回、年会長の村上さんが次のように記載しています。素晴らしいですね。

■ここから引用です(「年会長ご挨拶」の最初の3分の2です)。

 エピジェネティクスは、 Waddingtonが1942年に個体発生を理解するために提唱して以来、今では、遺伝子発現をはじめとする染色体制御やゲノム進化、さらには集団遺伝学や生態学まで含め、多くの生命現象の制御基盤を示す重要な概念となっています。一方で、がんや再生医療をはじめとする疾患の予防、診断、治療、また、薬学、農学などの応用科学にも大きな影響を与え、研究分野として大きな広がりと深化をみせています。それにともない、「エピジェネティクス」という概念にもいろいろな異なる解釈が生まれてきました。Wikipediaからそのいくつかを以下に並べます(一部改変)。

「遺伝物質からはじまり最終的な生物を形づくるすべての制御された過程」(Waddington, 1942)

「同一遺伝子型の細胞が異なる表現型を細胞分裂を越えて維持していること」の説明(Nanney, 1958)

「複雑な生物の発育中における遺伝子活性の時間的・空間的制御機構の研究」(Holliday, 1990)

「体細胞分裂あるいは減数分裂に伴う遺伝子機能におけるDNA配列の変化では説明できない遺伝的な変化の研究」(リッグス, 1996)

「DNA塩基配列の変更を伴わない染色体の変化に起因する安定した遺伝性の表現型を示すもの」(Berger et al, 2009)

うーん、色々とあります。「遺伝子の変化を伴わない」というのがポイントになるようですが、結局「なんでもあり」のようにも思えます。そこで、今回の年会では「え、これもエピジェネティクス?」というような話も含めて、広い範囲の演者の方のお話しをお聞きできないか考えました。北海道東部の中標津に行けばHPに掲載したような360°広がる地平線を見ることができます。そこで今年の年会は「エピジェネティクスの地平線」と銘打って、ユニークかつ多彩な視点で研究をされている方に演者としてお集まり頂きました。「地平線」は実在するものではありません、地平線を目指して行っても、常に地平線は先にあります。また、今自分が居る場所も他の場所からみれば地平線にもなります。エピジェネティクス研究分野の広がりを語る上で、まさに「地平線」は言い得て妙ではないでしょうか(自画自賛)。

■ここまで引用です。

 研究会年会では、わくわくする発表が相次いでいます。会期中なので、集計結果ではありませんが、参加者数は400人規模のようです。

 取材する立場としてもこれまで色々ありました。画期的な発見が相次ぐ分野ではありますが、「全体はよく分かっていない」ということを肝に銘じて、その一部についての仮説を検証した成果などを、着実に報道していきたいと考えております。

 日本神経学会での発表でも、エピジェネティクスやエピゲノムをキーワードとする発表を確認しました。

 そのうちの1つ、「ゲノムから孤発性神経疾患の解明へ-オーバービュー-」と題する辻省次さん(東京大学医学部附属病院分子神経学/国際医療福祉大学)の講演は、今日午後の予定です。

 日本神経学会で昨日聴いた発表のうち、八千代病院認知長疾患医療センターの川畑信也さんの講演「認知症診療からみた改正道路交通法施行1年後の現況と問題点」には、いろいろと考えさせられました。