【機能性食品 Vol.303】

生物工学会で学んだ“天然物の恵み”とChemical Defined(CD)

辛くないトウガラシで味の素が機能性表示食品の届け出
(2017.09.15 08:00)
河田孝雄
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 まずは、2週間後に迫ったノーベル賞の話題から。日本植物学会の記事をご覧ください。

(2017.9.13)
「ノーベル賞は植物学で」、大賞の大隅良典氏と学術賞の沈建仁氏が受賞講演
東京理科大の植物学会に1000人超、135年の歴史で最多
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/09/12/03206/

 次は、恒例の機能性表示食品のアップデイトです。ここ1週間では9月13日(水)の1回、更新がありまして、2017年度のCシリーズはこの1週間で4件増えまして、C166までの届け出受理が公表されました。

 これで有効な届け出件数の総数は、1053件になったもようです。初年度(2015年度)のAシリーズ(A310まで)が277件、2年目(2016年度)のBシリーズ(B620まで)が611件、そして3年目(2017年度)のCシリーズ(現在のところC166まで)が165件です。Aシリーズでは撤回が30件と法人番号未登録による欠番が3件、Bシリーズは撤回が9件、Cシリーズは撤回が1件です。

 この1週間で加わった4件には、新しい機能性関与成分は無いかと思います。

 実はその前の9月7日に更新された中に、新しい機能性関与成分がありましたので、記事にまとめました。次の日経バイオテクONLINEの記事にてご覧ください。

(2017.9.14)
味の素、機能性表示食品「カプシEX」は1日量が先行品の3倍
1日2粒中にカプシノイド9mg、先行品は11年間で4700万食以上の販売実績
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/09/13/03216/

 さて、今週は火曜日(9月12日)から木曜日(9月14日)まで、早稲田大学西早稲田キャンパスで開催された第69回日本生物工学学会大会を取材しました。

(2017.9.4)
日本生物工学会、早大で開催する第69回大会のトピックス31題を発表
九大のメタボローム、キリンの白麹、名大のiPS細胞培地を紹介
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/09/03/03161/

(2017.9.8)
パラミロン研究会が活動開始、9月12日に生物工学会でランチョン
「神戸ユーグレナ」を展開する神鋼環境ソリューションに事務局設置
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/09/07/03189/

 パラミロン研究会のランチョンは、別の社内案件がありましたため、参加できませんでした。

 さて、今回は“天然物の恵み”をキーワードとした話題を、生物工学会からお届けします。

 9月12日(火)午後のシンポジウム「培養・計測技術の最前線」で、中外製薬製薬研究部の槙坪寛勝さんの発表「抗体医薬品生産における培養プロセス開発戦略」を聴きました。

 そして、9月14日(木)の朝9時からのシンポジウム「醗酵生産技術の温故知新-その歩みと新展開」では、アステラスファーマテックの竹下敏一さんの発表「FK506発酵培地原料のリスク回避戦略」を聴きました。

 この2つの発表に共通するキーワードとして“天然物の恵み”を挙げてみました。

 中外製薬の発表では、抗体の生産に用いる培地は、完全合成培地が現在では主流になっているとお話しでした。中外製薬は、売上高の60%近くが抗体医薬です。

 槙坪さんは、培地のロット間差に悩まされ、それを解決してきた取組みを紹介しました。加水分解物を使う従来型の製法で開発されたプロセスを“既存プロジェクト”と呼び、新たに開発しているChemically Defined(CD)培地への移行を進めている状況を説明しました。

 アステラスの発表では、現在でも年1500億円以上を売り上げている主力製品、FK506などについて、発酵原料の調達リスクや、原料の品質変動リスクへの対応が説明されました。発酵生産に用いる植物由来の出発原料はコスト面では安価ですが、調達先や製品のロットごとに品質が変動するというリスクがあるのですね。

 竹下さんは、長期的に20%ほど発酵生産性が低下してしまっていたけれども、プロセスの再構築に取り組み、発酵プロセスの変動因子を解析して現在では2割ほど、発酵生産性を改善できていると発表しました。CD培地的な発酵原料への切り替えは現時点ではできていない、という旨を、フロアからの質問への答えでお話しでした。

 窒素源として用いている発酵原料3つのうちの1つが、コーンスティープリカー(CSL)であることも知りました。大学院の修士課程における実験にて、CSLをドラム缶から取り出して使っていました。特有の臭いは、今でもよく覚えています。

 培地や発酵原料の分析には、質量分析装置の進歩によって飛躍的に向上しているメタボロームの分析技術は使っているはずかと思いますが、複合成分は手ごわいのですね。まさに“天の恵み”なのだと、感心しました。

 メタボロームについては、先の植物学会での大隅良典さんのオートファジーの受賞講演でも最新の成果が発表されまして、大阪大学教授の福﨑英一郎さんとお取り組みとのことでした。

 食品の機能性成分の研究の多くでは、天然物の恵みが研究対象です。機能性成分の特定や機能性のメカニズム解明、品質管理はたいへんな取り組みであることを、改めて認識しました。

 原則毎週金曜日に配信している日経バイオテク機能性食品メールに掲載している記者によるコラムを掲載します。

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