【機能性食品 Vol.287】

大正製薬と佐藤園のトクホ商品の関与成分量不足と食物繊維分析法の進歩

血圧高め対策のトクホ関与成分のラフマは機能性表示食品で睡眠対策
(2017.05.19 07:30)
河田孝雄
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 まずは機能性表示食品のアップデイトから。この1週間では2017年5月12日(金)、5月16日(火)、5月18日(木)の3回更新があったようでして、2016年度のBシリーズが14件増えて610件になりました。初年度の2015年度の302件(撤回を除いた件数)との合計は912件と計算できます。最新の届出日は、2017年3月24日。2016年度の残りは1週間となりました。2017年度分の届け出受理公開は、再来週にも始まりそうですね。

 今回の16件には、新たな機能性成分はありませんでした。先週のメールで紹介した「ラフマ」を機能性関与成分とする機能性表示食品の届け出受理の第2弾が公表されました。この関与成分は、常盤植物化学研究所(千葉県佐倉市、立崎仁社長)が事業化しています。同社の機能性素材で、機能性表示食品の届け出の実績があるものは、イチョウ葉、ブルーベリーに続いて、ラフマが3つ目とのことです。

 1週間前のメールにて紹介したラフマの機能性の論文の著者の中には、常盤植物化学研究所の方もお1人いました。この論文はオープンアクセスになってました。

J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2015;61(2):182-7. doi: 10.3177/jnsv.61.182.
The Improvement of Sleep by Oral Intake of GABA and Apocynum venetum Leaf Extract.
Yamatsu A, Yamashita Y, Maru I, Yang J, Tatsuzaki J, Kim M.
Pharma Foods International Co., Ltd.

 さて、今回のメールのもう1つの話題は、食物繊維の分析法です。

 消費者庁が5月17日、「平成28年度特定保健用食品買上長鎖の調査結果について」を発表しました。6社7品目の商品を調査対象として買い上げて、許可等申請時に提出された方法にのっとって分析試験を実施したところ、佐藤園(静岡市葵区、佐藤公彦社長)の2品目「ドゥファイバー粉末スティック<グアーガム>」(許可番号1150)と、「緑の促茶」(同1230)で、関与成分の配合量が足りなかったとのことです。このうち前者は、大正製薬が販売していた商品です。

 佐藤園は、該当ロットの商品については自主回収しましたが、商品「緑の促茶」そのものの販売を続けると発表しました。大正製薬も、「ドゥファイバー粉末スティック<グアーガム>」を自主回収しました。

 佐藤園がトクホ表示許可を取得している商品で、大正製薬が販売しているものは他にもあります。BtoBの影響が心配です。

(2012.10.31)
大正製薬、生活習慣病対策トクホ主力の「リビタ」、2013年3月期に売上高50億円へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121031/164101/

 関与成分は2品目とも「グアーガム分解物(食物繊維として)」。太陽化学(三重県四日市市、山崎長宏代表)がインドで生産している豆(グァー豆)由来の水溶性食物繊維「サンファイバー」で、世界中に販売されています。

(2005.09.02)
太陽化学、グァーガム酵素分解物の過敏性腸症候群改善効果をイタリアで確認
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2003/1824/

 食物繊維の定量法として、世界標準では、液体クロマトグラフィー法(HPLC法)を用いた分析法が採用されていますが、トクホでは、ひと昔前といってもいい「プロスキー法」が、食物繊維の定量法として引き続き採用されています。

 プロスキー法では、測定対象の試料を各種酵素(熱安定αアミラーゼ、プロテアーゼ、アミログルコシダーゼ)で分解したあと、エタノールで沈殿させ、ろ過で沈殿物を回収し、エタノールとアセトンで洗浄し、乾燥した後で重量を測り、別途定量した蛋白質や無機物質の重量を差し引いて、食物繊維の量を算出します。

 複数の関係者にうかがったところ、プロスキー法による分析結果が、太陽化学がインドで実施した結果と、消費者庁が日本で実施した結果とに少し違いがあり、トクホの関与成分の基準値(下限値)を100とすると、97程度のものがロットによってはあったとのことです。

 一方、世界標準のHPLC法では、このロット間の差異による問題はなかったということのようです。

 先に説明したように、プロスキー法は、かなり手間のかかりそうな方法で、しかも、引き算によって算出します。分析の誤差要因がHPLC法に比べて多いのでは、と推察できます。エタノールの品質の影響もあるようです。蛋白質の重量は、ケルダール法により定量されます。無機物質は、試料を講演で焼いた後の残さの重量です。

 科学の進歩を踏まえた世界標準の分析法に変更していれば、今回のような事態には至らなかった、ということのようで、考えることが多いです。

 科学技術の進歩に伴って、よりよい分析法を実現できたのならば、トクホ制度などにも採用していったほうがよいのでは、と思います。

 もう1つ、基準値と許容範囲についても、今回の問題と関連して指摘しておきます。

 食品の栄養成分表示の栄養素については、表示している値を100とすると、120から80までが認められています。特に分解しやすい成分では、経年変化などによる減少を見越して品質保証期間中に80を切ることがないよう、多めに入れておくことが多いので、150とかも認められているケースがあるかと思います。確か、ビタミンCあたりが該当していたかと。

 一方、トクホの関与成分では、成分量の基準として下限値のみがあり、この下限値を下回った場合には、今回のような問題となります。

 食品にはいろいろな複合成分が入ってますし、今回のグアーガムもそうですが、原料は生物で個体差が大きかったりするので、品質管理はたいへん、と改めて思いました。

 今日(5月19日)から3日間、沖縄コンベンションセンターで開催されている第71回日本栄養・食糧学会大会に、関係の中核研究者が多数参加していますので、ご意見などうかがってみます。

 食物繊維は、「ルミナコイド」という新概念を日本から提唱するなど、日本が世界をリードしている部分もあります。

 松谷化学工業の難消化性デキストリンのように、国内外で広く実用化され、売上高が年100億円を超える機能性素材に育っているものもあります。

 同大会では、林原が事業化を開始した水溶性食物繊維素材である「イソマルトデキストリン」に関する発表を5月20日に予定しています。

 原則毎週金曜日に配信している日経バイオテク機能性食品メールに掲載している記者によるコラムを掲載します。

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