【機能性食品 Vol.258】

大隅さん登場の池上さんら近刊と食品安全委員会、生物工学会のつながり

(2016.10.14 17:00)
河田孝雄
東工大の新図書館
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 今日まで3日間、パシフィコ横浜で開催された「BioJapan」には、皆さんも参加なさいましたか。機能性食品の関連のセッションもたくさんありました。

※日経バイオテクONLINE記事
BioJapan2016が開幕
来場者1万5000人、8000件の面談を予定
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/10/13/01688/

 まずは、機能性表示食品の届出情報のアップデイトから。2016年10月13日公表分までで、2016年度のBシリーズが161件になりました。10月13日公表で、一気に15件増えました。2015年度のAシリーズ303件(310件から撤回の7件を除く)との合計では、464件ですね。

 今週の公表で注目は、味の素のヒスチジンです。グリシン、ロイシンなど必須アミノ酸に続き、今回も、機能性関与成分は、アミノ酸です。アミノ酸企業の面目躍如といえますね。

 同社の機能性表示食品の届け出受理が公表されたのは、これが4件目ですが、機能性表示食品の制度を利用した新商品は、今回の「毎朝ヒスチジン」が初めてです。これまでの3件は、先に商品化している製品について、機能性表示食品の表示を追加してリニューアル発売したものでした。

(2016.10.14 01:30)
味の素、機能性表示食品の関与成分第3弾もアミノ酸
「疲労感を軽減して作業効率向上に役立つ」ヒスチジン
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/10/14/01694/

 関連では、特別用途食品の品質管理の記事も、今日報道しました。

(2016.10.14)
消費者庁、トクホ以外の特別用途食品についても品質管理の調査依頼
個別評価型病者用食品はキリン、森永、大塚、アサヒが対象
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/10/14/01696/

 次の話題は、先週からのノーベル賞ウィークに関するものです。文学賞のボブ・ディランが、英国のブックメーカー予測で4位だったと聞き、びっくりしましたが、今回の話題は生理学・医学賞です。

 まずは、日曜日の学会での講演についての記事は、次のとおりです。

(2016.10.13 00:00)
「ノーベル賞は本庶さんと思っていた」「大隅さんは基礎研究というが」
日本医学会の高久史麿会長が日本臨床内科医学会で基調講演
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/10/12/01687/

 さて、本題は、大隅さんが登場なさっている近刊の内容についてです。

 朝日新聞出版が2016年9月30日に発行した「池上彰が聞いてわかった生命のしくみ 東工大で生命科学を学ぶ」を、先週土曜日に読みました。著者は、東京工業大学生物学教授の岩崎博史さんと田口英樹さんで、聞き手が池上彰さんです。

 さらに「東工大教員側のゲストとして、オートファジーという細胞内のタンパク質リサイクルシステム研究の第一人者で、ノーベル賞有力候補でもある」(書籍の「はじめに」からの引用)、東京工業大学栄誉教授の大隅さんも、登場なさっています。

 まさにタイムリーな出版です。

 ここで皆さんにお伝えしたいのは、この書籍の107ページの記載です(大隅さんが登場しているパートではないのですが)。

##ここから引用です(長いので一部抜粋です)
P.107
※同じことは酵素にも当てはまる。タンパク質である酵素も、体内ではアミノ酸にまで分解されるため、サプリメントの酵素そのものが体内で作用することはあり得ない。
##ここまで引用です

 「アミノ酸のポリマーである蛋白質やペプチドは、経口摂取すると、その大半はアミノ酸にまで分解されて体内に吸収される」のだけれども、「ポリマーの蛋白質である酵素として体内で作用する場合や、部分分解などで生成したペプチドが血管にまで到達して生理機能を発揮する」ことは“紛れもない事実”と、私は考えております。

 一般向け書籍なので、概要を示せばよいといえばその通りですが、摂取した蛋白質の一部(ごく一部)は、完全にアミノ酸まで分解されることなく体内で機能する場合がある、ということを、一般の方にも届けていただきたいです。

 例えば、ペプチドトランスポーターが消化管にあり、ペプチドはアミノ酸よりも体内への吸収が早いということが知られています。このトランスポーターは、薬物動態でも重要です。

 逆風にさらされている特定保健用食品(トクホ)の1つの柱は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性がある各種のペプチドです。それらのペプチドが発揮する健康機能において、ACE阻害による作用がどれだけ寄与し得るのかは、議論が続いていますが、末梢血管にまでペプチドが到達して、血管をしなやかに保つのに寄与しているという報告は、多数あります。

 経口投与する酵素は、日本で医薬品として利用されています。セラチオペプチダーゼなどが有名です。

 この件については、2016年5月の食品安全委員会での講演でも、同じことを感じました。

(2016.05.20 18:30)
【機能性食品 Vol.238】
パプリカのレプリカ、海ぶどう、郷ひろみと日本抗加齢医学会、医学会、医師会
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/mag/foodmail/16/05/27/00023/

※以下、このメールからの転載です。

 最後の話題は、水曜日(5月18日)午前中の食品安全委員会です。報道関係者向けの懇談会があり、「酵素」がテーマとして講演が行われました。

 酵素は蛋白質であり、食べるとアミノ酸に分解されるので、酵素は体内では働かない、という説明が何度もなされました。この説明には、問題が多すぎます。

 兵庫県で開催された日本栄養・食糧学会では、消化管で吸収されたペプチドの体内での機能に関する発表を多くうかがいました。アミノ酸のポリマーである蛋白質やペプチドが、消化管で吸収されるときには、全てアミノ酸になっているというのは、かなり古い科学だと、私は思います。

 食品安全委員会での問題のまずは、「体内」の定義。このメールでも先に紹介しましたが、腸内フローラは、健康に大きな影響を与えています。上の説明の「体内」は原則、消化管で吸収された後を、意味しているようですが、腸内も、体内といってもよいのではないでしょうか。

 プロテアーゼやアミラーゼなどの消化系酵素の製剤は、日本では医薬品(処方薬やOTC薬)として利用されていますし、経口摂取で一定の機能を発揮することは確かだと思います。

 また風邪薬のセラチオペプチダーゼは微量ではあるけれども、腸管から吸収されて体の中に入ることが分かっています。

 特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品において、機能性成分として「酵素」を利用したものはまだ登場していませんが、今後期待できます。消化系酵素については、食薬区分の問題がかかわるので、簡単ではないかもしれませんが。

 ともかくも腸内フローラは社会的関心が高いですし、腸などの消化管で健康に寄与する食品の1つとして、今後、酵素に対する注目度が高まります。報道関係者向けの説明会でも、丁寧な説明をすべきだと思います。「酵素は蛋白質であり、食べるとアミノ酸に分解されるので、酵素は体内では働かない」という説明は、あんまりではないでしょうか。
(以上、2016年5月の機能性食品メールからの転載でした)

 この後、日経バイオテクでは、次の報道もしております。

(2016.06.07 01:00)
広島大の加藤範久教授ら、麹菌の酸性プロテアーゼで腸内ビフィズス菌が増加
天野エンザイムとの共同研究成果を発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/06/06/00873/

 酵素などは、消化管内で作用する場合もあり、消化管内部は体内なのか体外なのか、いろいろな見方があるかと思います。体をドーナッツとみなせば、消化管の内部は、体の外部ということになりますかね。

 ともかくも、加藤さんの研究のように、新たな発見も相次いでいるのです。

 9月末に富山で開かれた第68回日本生物工学会大会では、加藤さんは「麹菌プロテアーゼの腸内細菌叢への影響」と題する講演を、9月30日のシンポジウム「和食の機能性のメカニズム~生活習慣病予防、腸内細菌へのインパクト~」でなさいました。

 大会前に都内で開かれた大会の記者会見でも、このシンポジウムについて説明があり、参加した記者から、加藤さんの発表について質問が出されていました。一般社会的にも注目すべき、研究成果では、と考えております。

 さて、東工大の書籍に戻りますと、この書籍は一般向けなので、概要を示せばいいというのは、その通りではあります。しかし、ここ20年ほどの研究の進歩も、一部、読者に伝えてもらいたい、と強く思いました。

 もちろん、この書籍は、オートファージやユビキチンープロテアソーム系などについては、最先端を踏まえて簡易に説明しています。おすすめの書籍であることも、併せて最後にお伝えします。

 今週の記事では、他に、カーギルと三菱商事の記事も、ご覧ください。

(2016.10.12)
Cargill社油脂の日本販売中止の原因となった組換え食品加工用酵素
食安委での安全性評価が10月19日始まる
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/10/11/01680/

 最後は、今週月曜日に発行した日経バイオテク2016年10月10日号の話題です。

 食品の機能性表示について5ページの特集記事を掲載しまして、機能性食材研究の連載第34回では、ウコンを取り上げました。ぜひご覧ください。

日経バイオテク2016年10月10日号○特集
進化を迫られる食品の機能性表示
機能性表示食品は有力素材出そろう、25年前からのトクホと調整必至
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/082400016/100500006/

日経バイオテク2016年10月10日号
機能性食材研究(34回)
ウコン(ターメリック)
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/082300007/100500002/

 原則毎週金曜日に配信している日経バイオテク機能性食品メールに掲載している記者によるコラムを掲載します。

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