【日経バイオテクONLINE Vol.3163】

薬学教育と開発現場のギャップに驚き

(2019.05.22 08:00)
三井勇唯

 皆様、こんにちは。三井勇唯です。日経バイオテク編集部に配属されて5週間余りが経ちました。毎日気が付くと時間が経過しているので、本当にあっという間に感じております。編集部の雰囲気には徐々に慣れてきましたが、まだまだ知らないことがたくさんあると日々痛感しております。

 ここ最近は製薬企業も決算説明会のシーズンとなり、私も何社か取材させていただきました。本日は取材する中で私なりに感じたことをお話しさせていただきます。

 決算説明会では、それぞれの会社が注力する開発パイプラインについての説明があります。上場ベンチャーにもいくつか取材しましたが、それらの開発品の説明を聞いて強く感じたのは「大学の教育では追いつけないほど新規性に溢れた画期的な医薬品が開発のレーンに乗っていること」です。

 業界の皆様からすれば、新しい作用機序の医薬品が次々と開発されていく様子は、当然の光景なのだと思います。

 ただ、昨年まで大学で薬学を学んできた身としては、大学で学んできた内容を古く感じ、それ故に過剰な新鮮さを覚えてしまいます。つまり、大学の教育が医療の進歩に追いつけていないのではないか、と感じてしまうのです。

 たとえば、近年盛んに研究開発が進められている再生・細胞医薬、核酸医薬、遺伝子治療といったモダリティに関して、大学の薬学教育では詳細を学ぶことはありませんでした。

 細胞を用いた治療や遺伝子治療に関しては、薬剤師国家試験の出題範囲には含まれているようで、概略や倫理的問題について取り扱うことはありましたが、現状の治療がどのような疾患を対象にしていて、どの段階まで開発が進んでいるのか等の詳細については、学ばなかったと記憶しています(あくまでも私見ですが…)。

 日頃医療現場で働く薬剤師の方々にとっては、細胞医薬、核酸医薬といった最先端の医療を実際に扱う機会は少ないため、薬学部における絶対的な必修項目ではないのでしょう。日々進捗する世界の最先端の開発状況を深く理解している教員も多くはないのだと思います。

 ただ、そうはいっても、薬剤師は医療を支える専門職であることが求められる以上、もう少し最新の医療事情について学ぶ機会があってもいいのではないかと感じます。

 治療技術の進歩が速いことは、とても誇らしいことだと思います。そこで、薬学教育においても、最新の研究動向などを講義に取り入れ、技術の進歩に取り残されない教育を行ってほしいと感じます。その結果、最新の医療事情に十分精通した本当の意味での医療の担い手として、薬剤師が活躍されることを願っています。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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