【日経バイオテクONLINE Vol.3141】

医薬品の販売情報提供活動ガイドラインの“副作用”

(2019.04.12 11:38)
久保田文

 こんにちは。副編集長の久保田です。先日来お伝えしていますように、2019年4月から、日経バイオテクの編集長を始め、編集部員が一部入れ替わりました。新人記者も配属されました。今後、取材の現場でお世話になることも出てくると思いますので、どうぞお手柔らかによろしくお願いいたします。

 さて、2019年4月から、厚生労働省が策定した「医療用医薬品の販売情報提供活動ガイドライン」の運用が一部を除いて開始されました。同ガイドラインは、ディオバン事件やCASE-J事件、イグザレルト事件など、不適切な広告などのプロモーション活動を受け、策定されたもの。医療用医薬品の販売情報提供活動の適正化を目指し、製薬企業に監督部門の設置や業務記録の作成・保管を求めたり、販売情報提供活動の人事評価の在り方を示すなど、かなり踏み込んだものとなっています。

 不適切なプロモーション活動がなくなり、適切な診療、適切な医療用医薬品の処方につながるという意味では、日本の医療(特に保険診療)にとって重要なガイドラインだと言えます。ただ一方で、私たち報道関係者は、今回のガイドラインによって“副作用”が生じるのではないかという懸念を持っています。

 厚労省は、今回のガイドラインに関するQ&Aの中で、メディア向けのセミナーやプレスリリースを通じた情報提供がガイドラインの適用を受けるかどうかについて、「実際になされた活動により『販売促進を期待して』なされたか否かを個別に評価・判断されるものであるから、一律に本ガイドラインの適用から除外されるわけではない。特に、一般人向けメディアが含まれる場合については、一般人向け広告に該当するおそれがあるため、慎重な対応が求められる」との見解を示しました。

 こうした見解をおもんばかって、現在、幾つもの製薬企業が、新薬の承認・発売時に開催していたメディア向けセミナーを行わないようにしたり、プレスリリースの送付先から一般人向けメディアを外したりといった対応を検討しています。ある製薬企業の広報は、「厚労省に販売促進だと誤解されるような記事が出たら大変なので、一般紙の取材は事実上受けられなくなるのでは」とこぼしていました。

 何が一般人向けメディアで、何が一般人向けメディアではないのかの線引きはよく分かりませんが、おそらく、新聞やテレビは、これまでのように製薬企業を介して疾患や治療薬の情報を入手することが難しくなりそうです。その結果、読者や視聴者の方々は、新聞やテレビを通じ、疾患について、治療薬について、新しい情報を手に入れる機会が少なくなるでしょう。なんとなく、情報をよりオープンに、オープンにしていこうという流れとは、逆を行っていると感じるのは私だけでしょうか。ガイドラインが出たことで、最終的に、患者が治療機会を逸して不利益を被らないことを願うばかりです。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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