皆様、こんにちは。この4月に日経バイオテク副編集長に就任しました、野村和博と申します。日経BP社の「バイオ」と名がつく媒体に配属されるのは、「日経バイオビジネス」編集部以来、実に15年ぶりとなります。10年以上前に休刊した日経バイオビジネスをご存知の読者は、本メルマガ読者の半分ほどいらっしゃるのではないでしょうか。私はその創刊メンバーの1人でした。とはいえ、日経バイオビジネスではあまり本筋の仕事をしていませんので、読者の方々の記憶にはほとんど私の名前はないと思います。「養殖成功のマツタケ、実はシイタケだった!」というような、オモシロ系の雑報ネタばかりやっていました。これからは本筋の仕事をやるので、今までにない頭の使い方をすることになりそうです。取材にお伺いした際にはどうぞお手柔らかにお願いします。

 さて、就任にあたって常々考えてきたことを記します。日本の研究者が、諸外国に比べて低待遇だということです。頭をひねりにひねって、アイデアを出していく仕事に対する評価がこの国では低い。私の同窓生の多くがバイオテクノロジー分野の研究者として働いていますが、報酬に満足しているような話はほとんど聞きません。それより資金のある企業に行って経営や投資に携わった方が収入は上がりやすい。少なくとも金融緩和によるカネ余りが続くここ数年は、確実にその傾向があります。

 先日、IT技術者である私の大切な友人が、大手電機メーカーから外資系証券会社に転職しようかと迷っていました。AIシステムの構築に携わるということで、年収が1000万円から2500万円にアップするとのこと。どうしたらいいかと相談メールが来ました。私は彼がストイックに仕事に取り組んでいるのに報われていないと常に感じていましたので、秒速で「行くしかないでしょ」と返信しました。その後彼は転職し、新しいキャリアを積んでいます。

 米Facebookは自社従業員の年収中央値が2600万円と公表しています。国内企業ではNTTデータが最近、スター技術者に3000万円の報酬を出すと宣言して話題になりました。IT業界では日本でも意思決定の早い新興企業が台頭し、研究者や技術者が報われる状況が整いつつあるようですが、バイオ業界はどうでしょうか。

 ちなみに弊社媒体(日経エレクトロニクス、日経バイオビジネス)が行った2005年前後の年収調査では、エレクトロニクス業界の技術者の平均年収が752万円だったのに対し、バイオ業界の研究者では622万円でした。昨今、中国のファーウェイなどが高待遇で日本人の若手技術者を採用しているのを見ると、その差は埋まるどころか、さらに広がっているものと思います。

 私、3月まで出向先の日本経済新聞社・企業報道部で記者をしておりました。ここ3年ほど、主に製薬会社とバイオ関連スタートアップ企業を担当し、遺伝子治療薬、癌ゲノム医療、再生医療などの記事を執筆してまいりました。

 久しぶりにバイオ関連の取材をして思ったことは、こんなにもバイオ業界が盛り上がっているのかということ。大手製薬企業が次々に、核酸医薬や細胞医薬、遺伝子治療薬などを製品化させているのには、ただただ驚くばかりです。

 ですが、それに伴って研究者の待遇も大幅に上がっているかというと疑問符が付きます。私がインタビューした製薬企業の経営陣の方々からは、そういう話は聞きませんでした。多すぎるMRをどうリストラしようという考えでいっぱいなのか、しばらくは大きな制度変更を期待できなさそうです。

 そこで注目しているのがベンチャー企業です。研究者が、自らの手で経営の舵取りをして事業を育てています。例えば武田薬品工業発のベンチャー企業は10社ほどあるようですが、中にはシーズが評価されてこの3月に30億円の資金調達に成功したコーディアなど、誕生してから1年あまりで大型調達に至ったところも出て来ています。バイオビジネス編集部にいた頃からずっと言われていましたが、ベンチャー企業の成功例が研究者の評価を底上げし、人材の流動性が高まり、キャリアアップの機会が増えていくことを願ってやみません。ようやく、それが本格化する時代が来たのだろうと思います。私にできることは、積極的に取材して、記事で皆さんの事業や技術をご紹介することだと思います。

 今後とも、よろしくお願いいたします。