【日経バイオテクONLINE Vol.3096】

米MD Andersonのロゴがヒントになった、医師主導治験を支援する寄付金プロジェクト

(2019.02.06 10:00)
高橋厚妃

 みなさんこんにちは、日経バイオテクの高橋です。おととい、抗癌剤の研究などを支援するプロジェクト「deleteC」のキックオフイベントに参加しました。deleteCは、実際に癌に罹患した若手の女性らが中心となって立ち上げたもので、医師主導治験を支援するための寄付金を集めるプロジェクトです(https://delete-c.com/)。その寄付金の集め方がユニークだと感じたので、今回ご紹介したいと思います。このプロジェクトの着想には、癌研究や治療で有名な、米MD Anderson Cancer Centerのロゴがヒントになったとか。

 deleteCの寄付金の集め方のコンセプトは、個人が気軽に参加できることです。個人が参加しやすい寄付金の集め方というと、クラウドファンディングなどが思いつきますが、同プロジェクトではそうした方法の他に、社会生活の中で見えるかたちで寄付を盛り上げ、個人の行動を促そうとしています。具体的には、世の中に溢れる「C(=cancer)」の文字を消すイベントが2019年5月11日に計画されています。一般的な言葉で例えると、「doctor」や「computer」などの単語中のCの文字を消して、「do tor」、「 omputer」と表記するというイメージです。イベントでは例えば、承諾を得た企業について、社名からCの文字だけ消した看板を登場させたり、このプロジェクトに協賛する企業が、製品のブランド名からCの文字を消したパッケージをつくって販売。私たちがそうした製品を購入することで、寄付ができる仕組みを想定しているそうです。

 また、個人の行動でプロジェクトの認知度を上げる試みが企画されています。TwitterなどのSNSで#deleteCのタグをつけると、自動的に文中からCが無くなったり、ハイライトされるような仕様になることを検討しているそうです。そうした個人のSNSによる発信が、寄付先のリンクと共に拡散されることで、deleteCプロジェクトの認知度を上げようとしています。

 deleteCで集めた寄付金は、抗癌剤の研究や医師主導治験を行う研究者の支援に利用されるそうです。なぜ、寄付金を集める方法が、製品の購入などイベント型のプロジェクトになっているのか――。主催者の方によればそれは、「患者は、社会生活の中で目に見える行動に励まされるから」なのだそうです。

 キックオフイベントで登壇した腫瘍内科の医師は、「自分の身内や友人が癌になったら、多くの人が言葉をかけて励まそうとするが、安易な励ましが患者にとってつらい場合がある」と紹介していました。でも、deleteCのプロジェクトの趣旨を理解した上で、「もし街でCの文字が消された看板を見かけたら」、「もしCの文字が消されたパッケージの製品を飲んだり食べたり、使ったりしている人をみかけたら」、「もし#deleteCのタグが付いた投稿をSNSでみかけたら」、闘病されている方にとっては勇気が湧く、というのです。

 米国など海外では、寄付の文化が根付いており、また、患者団体が積極的に医薬品の研究開発を促す例が数多くあります。日本でも、そうした文化が少しずつ広がったらいいなと思いました。「自分の行動で闘病している方に勇気を与えられるなら賛同したい」と考える人も少なくないはずです。

 最後にdeleteCのこぼれ話です。Cの文字を消すという着想は、米MD Anderson Cancer Centerのロゴから得られたそうです。私はキックオフイベントで言われて初めて気が付きましたが、同センターのロゴは、「Cancer」の単語の上に赤線が引かれており、消されているように見えるのです。みなさんはお気付きでしたか(https://www.mdanderson.org/)。

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