【日経バイオテクONLINE Vol.3083】

米Foundation Medicine社のラボを取材!!

(2019.01.18 08:00)
久保田文

 あっというまに正月休みが終わってしまいました。副編集長の久保田です。遅ればせながら、おめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

 もう2カ月以上も前に取材したものですが、ボストンにある米Foundation Medicine(FMI)社の本社兼ラボに取材に行きました。スイスRoche社と同社が主催したメディア向けイベントを取材するためです。Roche社やFMI社の研究開発方針や、癌ゲノム医療向けのプロファイリング検査を使っている医師や検査を受けた患者のトークなどを聞くことができ、非常に有意義な取材でした。

リポート◎米Foundation Medicine社の検査ラボを現場取材
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/082400017/011000044/

 取材を通じ、米国では、局所進行性の癌であるステージ3以降の患者が、プロファイリング検査の対象と認識されていることや、乳癌や肺癌など複数のガイドラインにおいてステージ3以降などの治療方針の決定に、プロファイリング検査が活用できると言及されていることなどを知りました。もっとも、プロファイリング検査を受けているのは米国でもまだ限られているのが実情です。加えて、大学病院やベンチャー企業などが開発した複数のプロファイリング検査が林立しています。

 では、プロファイリング検査はこれからどこを目指すのか。Roche社とその傘下のFMI社は、将来に向けた取り組みを着々と進めていました。具体的には、FMI社が集めた癌ゲノム情報と、Roche社がFMI社同様傘下に収めた米Flatiron Health社が集めた臨床情報を合わせ、臨床-ゲノム情報データベースを構築しているのです。

 臨床-ゲノム情報データベースは、プロファイリング検査を受けた患者と臨床経過がよく似た過去の患者を洗い出し、良好な予後が期待できる治療方針を選択したり、臓器別よりもさらに細分化されたドライバー遺伝子ごとの癌の患者数や治療の実態、疾病の負担や長期の予後を把握したり、細分化された患者が受けた治療の有効性や安全性、費用対効果を算出したり、臨床試験に適した患者を組み入れたりと、様々な活用が期待されています。目の前の患者を治療するだけにとどまらず、個別化医療、精密医療を進化させ、さらなる新薬の開発につなげるというサイクルが回り出すのです。

 おそらく、こうしたデータベースを構築する動きは、あちこちで本格化するでしょう。ただ、米国ではプロファイリング検査が林立している状況ですから、当然、データベースも林立するということになりかねません。米国の関係者の間では、日本での癌ゲノム医療の取り組みが世界でも結構進んでいる方と理解されているようで、ある研究者には、「日本のがんゲノム情報管理センター(C-CAT)は、国民皆保険という仕組みを利用して、解析後の癌ゲノム情報と臨床情報を一元的に集めるんだろ。それは米国にはまねできないことだよね」と言われました。民(産業)の力でフロンティアを切り開く米国と、官(行政)の力を駆使してそれを追う日本――。両者の違いを改めて実感した次第です。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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