【日経バイオテクONLINE Vol.3072】

日本のバイオ投資はどこへ行く

(2018.12.21 08:00)

 皆様こんにちは。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。年の瀬も押し迫ってまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。

 日経バイオテクONLINEは12/21(金)で年内のサイト更新を終了します。更新再開は年明け1/7(月)からとなります。また、メールマガジン「日経バイオテクONLINEメール」は年内は12/26(水)まで配信し、年明けは1/7(月)から配信を再開します。例年は1月元旦から3日にかけて、識者による「新春展望」を掲載してきましたが、今年はこれもお休みさせていただきます。楽しみにしていただいていた読者の方には大変申し訳ないですが、どうぞご理解いただければと思います。その分、スタッフ一同、2週間かけて英気を養い、7日以降、皆様にご満足いただける記事をお届けしていきたいと考えています。どうぞよろしくお願いします。

 さて、表題についてです。2018年12月10日、国内最大の官民ファンド産業革新投資機構(JIC)の経営陣が総退陣した件は既に新聞などで大きく報じられました。

 JICについては、日経バイオテクの最新号でも、「業界こぼれ話」で取り上げています。

産革投資機構はドリームチームだった!?
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/082300015/121300109/

 経営陣が総退陣に至る経緯などについては新聞などの報道に譲りますが、JICが設立された背景には、IoT・ビッグデータ・AIなどによる技術革新がグローバルに進行する中で経済成長の担い手を育てていくために、リスクマネーをどのようにして供給していくかという問題認識がありました。経済産業省では昨年10月に「第四次産業革命に向けたリスクマネー供給に関する研究会」という研究会を立ち上げて、その中で官民ファンドの在り方などを議論しています。また、「第4次産業革命時代におけるグローバル経済の動向とリスクマネー供給の在り方について」と題する報告書を、ボストンコンサルティンググループに委託して作成しています。

 これらを通じてうかがえるのは、日本ではシードやアーリー段階での投資はある程度あるものの(米国等に比べて十分かどうかは別ですが)、事業を拡大する段階(エクスパンション、レイターという言葉で表現されています)への資金供給が大きく不足していることです。私が参加した経産省の「バイオベンチャーと投資家の対話促進研究会」でも同じような議論がなされていて、ベンチャーキャピタルの投資はある程度あっても、ベンチャーが株式上場するとベンチャーキャピタルは株式を売却してしまい、買い手に回るのは個人投資家だけで、大金を運用する機関投資家が新興市場の株式にはあまり投資をしないため、上場した後のベンチャーの株価は低迷し、思うように資金調達ができず、継続して成長していけないという議論がありました。臨床開発などに大金を投資しなければならないレートステージの資金を供給するファンドなどが少ないため、逆に日本ではベンチャーがアーリーな段階から株式上場を急ごうとするという側面もあると思います。

 そこでJICでは、民間ファンドの投資が不十分なレートステージにリスクマネーを供給する役割を担おうとしていたのだと思います。国内での投資のスキームなどはまだ明確ではありませんでしたが、10月26日に第1号ファンドを米国に設立すると発表した時の説明資料では、年度内に国内にベンチャーキャピタルや上場企業への投資を行うファンドなどを立ち上げて活動を本格化していく方針を示していました。あのようなごたごた騒ぎで経営陣が総退陣した以上、仕切り直すにも引き受ける経営者が現れるのか全く不明ですが、「レートステージにリスクマネーを供給する」という役割の担い手が不在のままになっているのは確かでしょう。JICの予算凍結の背後には、政治的な思惑もあると思いますが、ベンチャーを育てていくエコシステムの輪が欠けた状態でいいのか、大いに疑問を感じるところです。

 2019年はもっと明るい年になるよう願います。本年も日経バイオテクをご購読いただきどうもありがとうございました。皆様どうぞ良い年をお迎えください。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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