【日経バイオテクONLINE Vol.3051】

睡眠検査器具の可能性に期待

(2018.11.21 08:00)
橋本宗明
 皆様、おはようございます。日経バイオテクの橋本宗明です。

 先日、筑波大学国際睡眠医科学研究機構(IIIS:トリプルアイエス)の柳沢正史教授が代表取締役CEOを務めるベンチャー、S’UIMIN(茨城県つくば市)が資金調達を行い、睡眠を検査するためのデバイス(器具)と人工知能(AI)による解析プログラムを医療機器として開発しようとしているという話を記事で紹介しました。

筑波大柳沢教授らが設立したS’UIMINが7億円を調達
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/021500017/111900119/

 詳細は記事で読んでいただきたいのですが、記事に書かなかったこぼれ話的な話題を紹介します。現在、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS:obstructive sleep apnea syndrome)の診断などには、睡眠ポリグラフ(PSG:Polysomnography)検査が一般的に行われていますが、S’UIMINで事業化を目指しているのは、患者が家庭で睡眠を計測できるような装置です。睡眠に関心を持っている人は多く、睡眠を計測するスマホアプリなどもたくさんありますが、体の動きや呼吸、心拍などから推定しているため、正確性に難があります。私の腕時計にも睡眠計測機能が付いていますが、起床してすぐに読書をしたりしていると、その時間は眠っていることにされています。その点、S’UIMINの装置はPSG検査同様、脳波などに基づいて、レム睡眠、ノンレム睡眠の違いや、睡眠の深さなどを計測しようというもので、医療機器としての開発を目指しています。

 「睡眠薬がよく効くのだから、睡眠の検査など必要ない」と考える人がいるかもしれませんが、手軽に正しく睡眠を計測できるようになれば、実際には眠れているのに「睡眠できていない」と誤認して不眠を訴えて睡眠薬の処方を受ける患者がいなくなり、医療費の無駄の排除にもつながることが期待されます。まさに、プレシジョンメディシン(精密医療)の一事例というわけです。

 また、この装置を通じて睡眠のステージなどを日常的に計測したデータが大量に集積していけば、睡眠をうまくコントロールする方法がみつかるなど、メンタルヘルスケアにも大きな成果が出てくる可能性があります。家庭用血圧計や血糖センサーなど、患者が自宅で日常的に利用できるような器具が登場して、医療内容が大きく変わったのと同じように、「教科書を書き換えたい」と柳沢教授は話していました。

 さらに、この装置をウェアラブルの脳波センサーととらえると、より様々な使われ方のアイデアも出てきそうです。例えば運転中にこの装置を用いることで、眠気などを察知してアラートを発するような仕組みができるかもしれません(自動運転になれば必要ないのかもしれませんが)。スポーツ選手などが競技前に集中力を高めたり、ストレスをコントロールしたりするのにも使える可能性がありそうです。何を計測してどういうデータを蓄積していくか次第ですが、デジタルヘルスのツールとして様々な用途に発展する可能性があると思いました。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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