【日経バイオテクONLINE Vol.3043】

2018年はバイオ医薬品の当たり年なれど……

(2018.11.09 08:00)
橋本宗明

 皆様、おはようございます。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 例年、この時期になると日経バイオ年鑑の編集作業が佳境を迎えると同時に、皆様よりも一足先に2018年度のバイオ業界について、総括する機会を得ることになります。今年もバイオ産業は様々な点で大きく進展したわけですが、特にバイオ医薬品が数多く承認され、大きな当たり年となりそうです。

 まだ2カ月近く残っているので、現時点での見通しとなりますが、抗体医薬では今年、10品目が新たに承認されることになりそうです。その中には、血液凝固第IXa因子と第X因子とに結合する中外製薬の二重特異性抗体「ヘムライブラ」(エミシズマブ)や、ヒトCD3とCD19に対する2種のマウスモノクローナル抗体の可変領域をリンカーを介して結合させたアステラス・アムジェン・バイオファーマの二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体「ビーリンサイト」(ブリナツモマブ)といった、技術的に全く新しいタイプの抗体医薬も登場しました。

 抗体医薬では、免疫チェックポイント阻害薬で、中外製薬の抗PD-L1抗体「テセントリク」(アテゾリズマブ)と、やはりPD-L1抗体のアストラゼネカの「イミフィンジ」(デュルバルマブ)が承認されました。2017年に承認された抗PD-L1抗体「バベンチオ」(アベルマブ)や、激しくしのぎを削る抗PD1抗体「オプジーボ」(ニボルマブ)と抗PD1抗体「キイトルーダ」(ペムブロリズマブ)と、どのように住み分けていくことになるのかが注目されます。

 サノフィのアトピー性皮膚炎治療薬「デュピクセント」(デュピルマブ)のように、抗体医薬としては新しい適応症を狙ったものも登場していますが、どちらかと言えば、既に抗体医薬が使われている疾患に対して、2番手、3番手の抗体医薬が承認されるといった事例が増えています。抗体医薬もかつてのように大型品ばかりではなく、小粒な製品が増えていき、利益率は低下していかざるを得ないでしょう。

 抗体医薬以外のバイオ医薬品でも同じことがいえそうです。遺伝子組換え血液凝固因子製剤では2018年に、ノボノルディスクファーマのペグ化第IX因子製剤「レフィキシア」(ノナコグベータペゴル)と、バイエル薬品のペグ化第VIII因子製剤「ジビイ」(ダモクトコグアルファペゴル)の2品目が承認されました。遺伝子組換え血液凝固因子製剤は2014年頃から新薬ラッシュが続いており、市場はかなり混雑してきた印象です。

 バイオシミラー(バイオ後続品)も同様です。2018年は、「ハーセプチン」(トラスツズマブ)の後続品として、日本化薬が韓国Celltrion社、同Celltrion Healthcare社などと共同開発したもの、第一三共のもの、ファイザーのものと、3製品が承認されました。また、ファイザーは「レミケード」(インフリキシマブ)の後続品でも承認を得ていますが、インフリキシマブのバイオシミラーも3製品目。バイオシミラーでは、フィルグラスチムも3製品が販売されています。今後も大型の抗体医薬の特許切れが相次ぎ、バイオシミラーの市場は拡大するものと思われますが、プレーヤーが多く、競争は激しくなりそうです。

 日本の製薬業界は、薬価制度の抜本改革によりかなり厳しい状況に追い込まれています。一方でバイオ医薬品はトップセールスランキングの上位に何品目も並ぶなど高収益を挙げてきましたが、今後はこれまでのようにドル箱と呼べるような存在ではなくなっていきそうです。あらためて言うまでもありませんが、新しいイノベーションを起こさなければ、生き残っていくのは困難な状況です。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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