【日経バイオテクONLINE Vol.3033】

スプライシング制御の低分子薬で競うNovartis社とRoche社

(2018.10.26 08:00)
久保田文

 おはようございます。副編集長の久保田です。先日、低分子薬の新たな作用機序(MOA)として、mRNAなどの核酸を低分子薬で狙う動きについてお伝えしました。

特集◎低分子薬で核酸を標的に
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/082400016/091900064/

 実をいうとこの特集、「最近論文が増えているな」という個人的な興味から取材を始めたテーマだったのですが、グローバルファーマの動きを見ていると、どうやら本格的に研究開発が加速しているようです。本日は、その先頭を走っているのが、スイスNovartis社であり、スイスRoche社であるというお話です。詳細は後ほどお伝えするとして、毎度のことで恐縮ですが、その前に宣伝をさせてください。

 日経バイオテクでは、2018年12月8日午後、「低分子薬で核酸を標的に」をテーマに、都内でセミナーを開催いたします。当日のパネルディスカッションには、国内の専門家に加え、核酸を標的とした低分子化合物の創薬研究を手掛ける、国内製薬企業の担当者の方にも加わっていただけることになりました。ですので、ご参加いただく皆様には、アカデミア、ベンチャー企業、製薬企業と、それぞれの立場からお話を伺えると期待しています。既に多くの読者の皆様からお申し込みをいただいていますが、まだ間に合いますので、お早めにお申し込みください!

=セミナー◎「低分子薬で核酸を標的に」====
2018年12月5日(水) 13:00~17:30 (開場12:30)
日経BP社 本館5Fセミナーホール(東京・神谷町)
【セミナー詳細はこちら】
https://nkbp.jp/2xWo1iG
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 さて、本題に戻ります。Novartis社の日本法人であるノバルティスファーマは、2017年10月23日、都内で記者向けに「Novartis Innovation Update 2018」を開催しました。スイスNovartis社、ノバルティスバイオメディカル研究所(Novartis Institute for BioMedical Research:NIBR)の各拠点の担当者が、現在手掛けている探索研究を紹介。キメラ抗原受容体T細胞(CART)療法、二重特異性抗体、エピジェネティック創薬、遺伝子治療と、NIBRが多様なモダリティを扱っていることがよく分かりました。近年グローバルファーマは、バイオロジーを深く掘り、標的やMOAにとってベストなモダリティを選択するというアプローチで研究開発を進めていますが、まさにその最前線に触れることができました。

 そんな中、NIBRで中枢神経領域でグローバル責任者を務めるRicardo Dolmetsch氏は、核酸に作用する低分子薬として、branaplam(開発番号:LMI070、NVS-SM1)を紹介しました。branaplamは、「mRNAに結合することが確認されており」(Dolmetsch氏)、スプライシングの際、スプライソソームを構成するU1 SNRPの認識を変えて、機能を持つSMN蛋白質の産生を増加させる低分子化合物です。同社は現在、脊髄性筋委縮症(SMA)1型の小児患者を対象に、欧州でbranaplamのフェーズI/IIを実施しています。

 Dolmetsch氏は、「branaplamの可能性に期待している」とする一方で、ライバルとして、米PTC Therapeutics社と提携したRoche社が開発中のRisdiplam(RG7916)を挙げました。Risdiplamは、核酸に作用するのか蛋白質に作用するのかは明確ではありませんが、スプライシングを修飾して、機能性を持つ同じくSMN蛋白質の産生を増加させる低分子薬です。現在、SMAを対象に開発が進められており、フェーズII/IIIで良好なデータが得られています。

 米Biogen社と米Ionis Pharmaceuticals社が開発したSMA治療薬の「スピンラザ髄注」(ヌシネルセンナトリウム)の登場で、スプライシングの調整・制御というこれまでにない作用機序が有用であることが明確になりました。加えてもし、branaplamの臨床試験で良好な結果が得られれば、核酸(mRNA)を狙った低分子薬の有用性についても、裏付けを得られることになります。核酸を標的にした低分子薬には、常に特異性が出ないのではないかという懸念が付きまとっていますので、branaplamの臨床試験の結果は、いろんな意味で業界から注目されるものになるといえそうです。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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