【日経バイオテクONLINE Vol.3026】

健常者の腸内細菌叢解析コホートの重要性

(2018.10.17 08:00)
高橋厚妃

 みなさんこんにちは、日経バイオテクの高橋です。先日、「腸内細菌叢と癌治療」の特集をまとめました。特集に関連したインタビュー記事も先週から今週にかけて公開しています(最後に一覧をつけました)。

 今回は特に、免疫チェックポイント阻害薬の効果予測や治療効果の増幅と腸内細菌の関わりについての研究や、腸内細菌が発癌に関係する可能性があるとするトピックを中心に取材しました。今回の取材で感じたのは、多くのアカデミアや企業の研究者が、腸内細菌叢の解析に対して期待や可能性を感じているものの、解決するべき課題がまだ多くありそうだということでした。

 例えば1つに、腸内細菌叢の解析結果の解釈が難しいという点があります。現在、様々な疾患と腸内細菌叢の関係が示唆されており、患者と健常者の腸内細菌叢を解析する研究などが行われています。

 ただ、健常者の腸内細菌叢でも、遺伝的背景や食生活などの違いに起因するそもそもの違いがあるため、解析結果で生じた「腸内細菌叢の差」が、本当に疾患に起因する差であるという判断は簡単にはできないようです。特に企業は、実用化に踏み切るには、まだエビデンスの集積が必要な段階と考えている印象です。

 そこで日本では、製薬企業や食品企業などが集積し、健常人の腸内細菌叢を定義することを目指したコンソーシアム「日本マイクロバイオームコンソーシアム」が2017年4月に発足しました。各社の非競争的な分野として、日本人の健常人のマイクロバイオームを解析し、データベースを構築しようとしています。健常人のデータベースができれば、日本人の患者との比較がしやすくなり、解析結果で生じた差が、疾患由来であるかどうかが判断しやすくなります。また、作用機序の解明などもしやすくなると期待されます。同コンソーシアムは現在、健常人を対象としたコホート研究を行うための標準化プロトコールの開発などを行っているところです。

 こういった健常者を対象としたコホート研究は、海外では既に開始されている例があります。2018年10月11日に開催された、BioJapan 2018の日本製薬工業協会が主催したセミナー「日本マイクロバイオームコンソーシアム後援、アジアにおける国際協働を通じたヒトマイクロバイオーム研究の産業応用を目指して」で、オランダUniversity of Groningenのバート・スヘールダー氏が、健常者を対象に、腸内細菌叢の解析を含めたコホート研究を開始したことを説明していました。

 今後、日本でマイクロバイオームの研究がどのように発展していくのか、これからも注目していきたいと思います。

特集◎腸内細菌と癌治療
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/082400016/100300065/

国立がん研の西川氏、抗PD1抗体効きやすさと日本人の腸内細菌叢を解析
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/18/10/09/04818/

昭和大角田氏、便移植と免疫チェックポイント阻害薬併用の臨床研究を開始へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/18/10/09/04819/

小野薬品、腸内細菌叢の解析を創薬に応用するには作用機序の解明が重要
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/18/10/09/04820/

札医大の能正氏、大腸癌の腫瘍用いてフソバクテリウムの有無を解析
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/18/10/09/04821/

静岡県立大渡辺教授、便中のコリバクチンを検出するプローブを開発
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/18/10/10/04826/

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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