【日経バイオテクONLINE Vol.3012】

GVHDを対象とした細胞医薬の開発が続々

(2018.09.26 12:00)
高橋厚妃

 みなさんこんにちは、日経バイオテクの高橋です。富士フイルムが、2018年度中にも、他家iPS細胞由来間葉系幹細胞(MSC)の治験届を国内で提出する予定であることを明らかにしました。対象疾患は、急性移植片対宿主病(GVHD)です。昨今国内で、GVHDを対象とした細胞医薬の開発が活発化しています。

 GVHDは、移植片に対して宿主が起こす免疫反応で生じる合併症です。MSCは、免疫抑制効果があると言われており、GVHDの患者に投与する臨床応用が進んでいます。

 そもそも国内には、既に承認されたMSCの細胞医薬があります。JCRファーマの「テムセル」(ヒト(同種)骨髄由来間葉系幹細胞)です。2015年9月に、造血幹細胞移植後のGVHDを対象に承認を取得し、2016年2月から販売しています。

 現在GVHDを対象として臨床開発中の主な細胞医薬の1つは、兵庫医科大学病院と北海道大学病院の医師主導治験を行っている他家の羊膜由来間葉系幹細胞(MSC)があります。本来は、医療廃棄物として廃棄される羊膜からMSCを分離し、増殖させて細胞製剤にします。

 2つ目は、東京大学医科学研究科附属病院が医師主導治験を実施している、臍帯由来間葉系幹細胞(MSC)です。臍帯はへその緒のことで、胎児と胎盤をつなぐ管状の組織。臍帯からMSCを分離し、増殖させて細胞製剤にします。

 臍帯由来MSCについては、同医師主導治験で安全性の確認とproof of concept(POC)を確立した後は、日本トリム傘下のヒューマンライフコード(東京・千代田、原田雅充社長)が、再生医療等製品として臍帯由来MSCの企業治験を進め、承認申請を目指す予定です。

 同じGVHDを対象としているとはいえ、これまでに挙げた製品は細胞ソースが全て違います。細胞ソースは、製造コストに大きく影響しそうです。特にiPS細胞は、MSCに分化させる工程が入るため、最終製品に未分化のiPS細胞が残っていないかどうかを確認したりする必要もあるでしょう。現状では、ヒト組織由来MSCの製造と比較してiPS細胞由来MSCの製造コストが高くなる可能性があると考えています。

 今後の開発動向に注力しながら、それぞれの細胞ソースの長所や短所を探っていきたいと思います。

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