【日経バイオテクONLINE Vol.3006】

テラ、第三者委員会の調査報告書を読んで……

(2018.09.14 10:00)
久保田文

 おはようございます。日経バイオテク副編集長の久保田です。

 「会社の体をなしていない」――というのはこういう時に使うのではないかと思いました。昨日、テラが公表した第三者委員会の調査報告書を読んでの感想です。50ページ超にわたる調査報告書は、なかなかの読み応えでした。

テラの第三者委員会、矢崎社長と医創会の長年の密接な関係性を指摘
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/18/09/13/04718/

 結論から言えば、矢崎雄一郎社長による一部の株式売却手続きに関して、社内規定違反や大量保有報告規制違反、テラの金商法違反などが認められたことを除いて、インサイダー取引など明確な法令違反や社内規定違反は認められなかったとしています。不透明だった最重要の取引先である医創会からの滞留債権の回収についても、医創会が借り入れを行って返済していたことが分かりました。業界関係者からは「上場廃止にはならないことがはっきりした」として、安堵する声も聞かれました。

 しかし、そうでしょうか――。調査報告書は同時に、矢崎社長が長年、同社の取引先だったはずの医創会をコントロールする立場にあったと明らかにしました。そして、医創会からの滞留債権の回収に関して当初は、矢崎社長が安値で株式を売却し、矢崎社長が設立する株式会社がその売却先から株式の売却代金を借り入れ、医創会に融資を行って、医創会に滞留債権を返済させるスキームが動いていたことも判明しました。

 結局、株式売却や借り入れは実現したものの、テラの社内から疑義が呈されて、同スキームは頓挫しましたが、そもそもそうしたスキームが動くこと自体、理解に苦しみます。また、上場廃止基準に抵触することを回避しようと、テラが医創会の滞留債権を回収しなければならなくなる中で、矢崎社長と医創会との密接な関係が、様々な株式売却や契約、資金調達に影響した様子を浮かび上がらせています。ここまでガバナンスが効いていない、コンプライアンス意識が無い経営陣に投資していた投資家は、今回の調査報告書をどう読んだでしょうか。

 さらに言えば、最大の取引先だった医創会とテラがここまで密接な関係だったとなると、テラの樹状細胞ワクチン療法というサイエンス自体にも、疑いの目が向けられかねません。医創会の系列のクリニックやその医師が、どこまで独立してテラのサイエンスの有用性を評価していたのか、個人的には知りたいところです。重大な法令違反はなさそうだから問題ではない、上場廃止になるわけではないからよかった、と思うようでは、再びバイオ業界で、同様の事態が起きるのではと危惧されます。

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