【日経バイオテクONLINE Vol.3004】

Google創業者のパーキンソン病の原因遺伝子の働きを東大チームが解明

(2018.09.12 08:00)
小崎丈太郎

 セルゲイ・ブリン――。知る人ぞ知る米Google社の創業者の1人です。コンピューター業界に詳しい人ならば、「何を今さら」ということになるのでしょうが、一方でパーキンソン病の病原遺伝子の保因者であることはどのくらい知られているのでしょうか.
 パーキンソン病は中脳黒質の神経細胞が死ぬ病気で、患者は種々な運動障害や自律神経障害に悩まされることになります。ブリン氏が持つ原因遺伝子はLRRK2(Leucine-Rich Repeat Kinase2)というリン酸化酵素をコードする遺伝子です。ちなみに同氏の母親も保因者だそうです。

 家族性パーキンソン病ではこのLRRK2の機能が亢進(こうしん)していることが明らかになっています。既に、米国ではDenali Therapeutics社というサンフランシスコにあるベンチャー企業が、2018年にLRRK2阻害薬のフェーズIに成功したと発表して注目されていました。ちなみに、このDenali社はGenentech社の元Chief Scientific OfficerのMarc Tessier Lavigne氏が設立者の1人となっている、神経変性疾患の治療薬を専門に開発するためのベンチャー企業です。

 最近、東京大学大学院医学系研究科の岩坪威教授のグループが、このLRRK2が蛋白質Rabをリン酸化することによって機能を発揮することを突き止め、米国科学アカデミー紀要に発表しました。Rabのリン酸化によって、細胞内の物質分解に関わるリソソームに関わるストレスを緩和しているとのことです。ストレスの軽減とともに「内容物の細胞外放出も亢進するために、異常蛋白質の分解が不十分なまま周囲に放出され、神経細胞に変性が広がることが推定される」と岩坪教授は指摘しています。

 パーキンソン病患者の脳にはαシヌクレインという蛋白質がレビー小体として蓄積し、神経細胞死に関与しています。このαシヌクレインを分解しているのがリソソームなのですが、LRRK2はリソソームのストレスの緩和を図る一方で、αシヌクレインを不十分な分解のまま、細胞外に放出している可能性があります。しかも罹患した神経細胞から放出されたαシヌクレインが近くの正常な神経細胞へとあたかも伝染病のように病変が広がっていくのではないかとも考えられているのです。

 映画「バック・トゥー・ザ・フューチャー」でおなじみ、俳優のマイケル・J・フォックス氏もパーキンソン病を患い、私財を投じてパーキンソン病の治療法の研究を支援する財団を設立しています。ブリン氏もこの財団を通じてパーキンソン病の研究を支援しています。
 パーキンソン病の治療研究といえば最近の話題はiPS細胞を利用した再生医療ですが、これからは細胞内物質移動や蛋白質分解という点からも研究が進むことになりそうです。

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