皆様、おはようございます。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。本日午後から東京・神谷町の弊社会議室にて、「創薬パイプライン研究」のセミナーを開催します。当日受付もありますので、午後時間ができたという人は、ぜひ顔を出してみてください。15時スタートです。世界で研究開発中のパイプラインを俯瞰した、ほかほかの創薬トレンドをお伝えいたします。

https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/info/sl/18/07/11/00068/

 さて、徳島市に本社を置くバイオベンチャーのDelta-Fly Pharma(徳島市、江島清社長)の東証マザーズへの上場が承認されました。上場予定日は10月12日。バイオベンチャーの上場は、ソレイジア・ファーマが上場した昨年3月以来、1年半ぶりとなります。

 同社は「モジュール創薬」という手法で新規抗癌剤の開発を目指すバイオベンチャーです。モジュール創薬というのは、既存の薬剤を改良したり、開発を断念した薬剤の用量を見直すなどして、基礎研究にはお金をかけず臨床開発に注力して開発を進めようという、同社独自の開発手法です。既に活性を有することが確認されている化合物を「モジュール」と捉え、それに改良や工夫を施して候補化合物にするわけなので、開発コストやリスクを抑えながら、短い開発期間で開発できる可能性があります。この手法を用いた開発品として、同社は前臨床試験中のものも含めて5つの開発品を開示しています。

 同社では株式上場に伴い、70万株の公募増資を行う計画です。幸い、8月半ばからバイオ株の上昇が続いており、8月16日に400を割り込んで396.82となった日経BP・バイオINDEXも、8月31日には473.02と、この間に2割近く上昇しています。絶好のタイミングでのIPOとなるのか、久々のバイオ株のIPOが株式市場でどのように捉えられるかが注目されるところです。

 それにしても今年初めてのバイオのIPOには、「やっとか」というのが偽らざるところです。米Nasdaq市場では今年も依然として高水準のIPOが続いています。日本でもスタートアップは次々と登場していますが、この調子ではそのうち何社がIPOにたどり着けるのか、ちょっと心配になってきます。バイオベンチャーにとっては、日本の株式市場ではなく海外市場でIPOしたり、M&Aの出口を早い段階から視野に入れておくというのが現実的な選択肢かもしれません。

 そんな日本の経営環境の課題について話をしていると、あるベンチャーの関係者は「エコシステムが成熟化してしまっている米国に今更出て行くよりも、エコシステムが未完成の日本の方が様々な意味でビジネスチャンスがあるのでは」と話していました。確かに、バイオ産業というエコシステムの中で何を担おうとするのかによって異なるとは思いますが、まだまだエコシステムが不完全な日本にこそ活路があるという見方は正しい面もあると思われます。

 薬価制度改革や後発医薬品の使用促進策などで日本の医薬品市場は縮小傾向にあり、特に中堅以下の製薬企業には経営環境の厳しさが増していますが、エコシステムの中での自社の役割を適切に見つけ出すことができれば、生き残るチャンスはあるかもしれません。さらに言うと、今、医療ビッグデータやデジタル技術を取り込みながら医療・ヘルスケア産業全体は大きく変容していこうとしています。従って、製薬、バイオの枠組みにとらわれることなく、ビジネスチャンスを見出していく能力が、今の経営者には求められているように思います。