みなさん、おはようございます。日経バイオテクの高橋厚妃です。2018年7月中旬に、米国フィラデルフィアで開催された2018 BIO World Congress on Industrial Biotechnology(Industrial BIO 2018)に参加してきました。米国のバイオ産業の団体である米Biotechnology Innovation Organization(BIO)が主催しているものです。

 Industrial BIOは、バイオ燃料やバイオリファイナリー、藻類、バイオプラスチック、合成生物学など医療以外のバイオの幅広いテーマを扱う展示会です。特に目立ったのは組換え微生物を使った物質生産に取り組む企業の話題でした。

 Industrial BIO 2018の活況な様子については、来週月曜日(2018年8月6日)に発行される特集でまとめたのでご覧ください。今回は、Industrial BIO 2018に参加した印象を書きたいと思います。改めて思ったのは、欧米は、創薬ベンチャー企業だけではなく、バイオの工業分野のベンチャー企業もかなり多いということでした。そういったベンチャーは、合成生物学の「新しい細胞をゼロから構築する」という考えに通じるものがあり、自らを合成生物学ベンチャーと名乗る企業もあります。

 今回、商業生産に成功した例などを発表したベンチャーの多くは、2000年代に設立されていました。2000年代といえば、次世代シーケンサーが登場し、ゲノム情報が増えたり、メタボローム解析が盛んになった時期と重なります。その後10年以上の間、ベンチャーは蓄積されたデータを活用し、微生物の代謝経路を大きく変えることで、従来は作れなかった高価格の物質の生産に成功。ここ最近で商業化された例が増えてきた、という流れだと理解しました。

 Industrial BIO 2018では、特に米国の合成生物学ベンチャーの取り組みが、次のフェーズに移行している様子が分かりました。情報解析のIT技術や、ゲノム編集、DNA合成などの技術が発展し、より早く、より高い価値の物質を生産する微生物株を作製しようとしています。一方日本では、創薬ベンチャーの数は増えてきたものの、合成生物学ベンチャーの数は少ないといってよいでしょう。日本では約10年ぶりに、ベンチャー支援も盛り込まれたバイオ戦略が策定されます。それも追い風に、この分野がもっと日本で活発になることに期待しています。