皆様おはようございます。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 日経バイオテク本誌では、もう10年以上にも渡って各疾患領域ごとの「パイプライン研究」を掲載してきました。この連載のためには、製薬企業やバイオベンチャーが有するパイプラインの疾患領域ごとの調査が必要で、この作業は今後も継続的に行っていく必要がありますが、その大本となるような、様々な企業が臨床開発中の様々なパイプライン情報を1つのデータベースにすれば、もっと色々な場面で利用できるだろうと考えて、パイプライン研究の著者である伊藤勝彦さんの協力を得て独自の「パイプラインデータベース」を作成しました。その上で、昨年6月より日経バイオテクONLINE法人版の読者向けにサービスの提供を開始しました(法人版の契約をお持ちの方は、上部の白い帯の右の方「データベース」をクリックして帯の少し下に現れる「パイプライン」をクリックするとご利用いただけます)。昨日、このデータベースの内容を全面的に更新しましたので、その紹介をさせていただきます。

 開発中の医薬品候補化合物を収録したデータベースは既に幾つかありますし、我々のデータベースに収録したプロジェクト数は5000強程度なので、比較的収録数は少ないかもしれません。というのも、我々のデータベースの目的は、ただ量を集めようというのではなく、領域ごとやモダリティ別に分類して研究開発のトレンドなどを把握するのに役立てようということだったからです。そこで、ある程度情報開示の方針が決まっていて、継続して情報開示がなされる株式上場企業をベースに、国内については編集部が直接取材できるので、未上場のバイオベンチャーも含めて、情報収集をしようということになりました。ちなみに、我々のデータベースは化合物の品目ごとではなく、化合物×適応症ベースのプロジェクトベースで作成しています。このため、対象疾患が異なれば別のプロジェクトとなります。

 調査の対象としたのは、国内企業については主要な製薬企業と臨床開発段階のプロジェクトを有するバイオベンチャーの計107社、海外企業については米国研究製薬工業協会(PhRMA)や欧州製薬団体連合会(EFPIA)に加盟する主要製薬企業に、米国と欧州の証券取引所に株式を上場しているバイオベンチャーを加えた608社です。原則、企業ごとにホームページなどで開示されている情報をベースに、日本医薬情報センター(JAPIC)が運営する「臨床試験情報」、米国立衛生研究所(NIH)の「ClinicalTrials.gov」、欧州医薬品庁(EMA)の「Europian Union Clinical Trials Resister」の登録情報を取り入れながら、臨床試験段階にあるプロジェクトを編集・整理していきました。調査は海外企業については2018年3月から5月初旬にかけて、国内企業については2018年5月から6月末にかけて行いましたので、海外企業も国内企業も、2017年度(海外は2017年12月期、国内は主として2018年3月期)の決算発表時に更新したパイプラインの情報を反映しています。特に、各プロジェクトについて、JAPICやClinicalTrials.govでの試験番号なども分かる範囲で掲載するようにしました。このため、データベースを手掛かりに、より詳しい情報にアクセスできます。

 掲載したプロジェクト数は、開発中止となったものも含め5272品目に上ります。国内企業は1388プロジェクトで、そのうち中止は252プロジェクト、海外企業は3884プロジェクトで、そのうち中止は407プロジェクトです。全ての企業が「中止」を発表してくれるわけではないので、ホームページなどで開示しているパイプライン表から削除されていたなどの理由で「中止」と推定されるような場合にも「中止」と判断しました。中止のプロジェクトは、データベースではグレーの地を敷いて表現しています。なお、共同開発プロジェクトなどで、一方が中止を発表した場合であっても、もう一方が開発を継続していたり、情報開示方針が異なる場合など、同じプロジェクトで地が敷いているものと地が敷いていないものが併記されているケースもあります。また、企業ごとに情報を編集しているので、共同研究などの場合には重複して収録されていることになります。

 このデータベースの情報を基にして、編集部では2つのプロジェクトを予定しています。1つは全てのプロジェクトを、領域×モダリティ別に分けて、全体像や傾向を把握できるようにした書籍「世界の創薬パイプライン2018/2019」の発行です。特にこの書籍では、領域×モダリティ別に整理した後、作用機序(標的分子)ごとに並べることで、現状で競争が激しい標的分子は何で、次の研究開発の焦点になる可能性がある標的は何か、その標的をターゲットとするにはどのようなモダリティが有力かなどを把握しやすいように心掛けました。一言でいうと、国内外の製薬企業やバイオベンチャーが有するパイプラインを、網羅性と一覧性を確保しながら編集・整理した書籍となります。ただ、紙の書籍という限られたスペースに情報を掲載するために、データベースには掲載している試験番号などの情報は割愛せざるをえませんでした。ぜひ、データベースと併せて利用いただければと思います。書籍は7月31日の発行予定です。

 もう1つは創薬パイプライン研究セミナーの開催です。こちらは共同研究のプロジェクトなど、データベースでは重複掲載されている情報を1つにしたり、中止された品目や、承認された品目は除くなどしながら、よりリアルな情報を抽出して、創薬のトレンドを分析していきます。昨年開催して好評を得た「創薬パイプライン研究セミナー」の続編で、講師は昨年同様、伊藤勝彦さんにお願いしています。各領域ごとのモダリティの分布、企業ごとのモダリティの分布の違いなど、創薬のトレンドや、製薬企業の研究開発戦略の特徴などが把握できるセミナーになると考えています。こちらは9月に開催する予定で、準備を進めています。

 書籍もセミナーも間もなく申し込みの受付を開始しますので、皆様奮ってご参加ください。また、パイプラインデータベースは日系バイオテクONLINE法人版限定のサービスとなりますので、これを機会に法人版の利用を検討いただけると幸いです。

http://nbt.nikkeibp.co.jp/bio/lp/