【日経バイオテクONLINE Vol.2948】

理系教育でアントレプレナー志向の人材を育成

(2018.06.20 08:00)
高橋厚妃

 おはようございます。日経バイオテクの高橋厚妃です。先日、ユニークな教育カリキュラムを持つ大学院を見つけました。アントレプレナーシップを持つ理系人材の養成に力を入れる、神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科です。同研究科の話を聞いた時に思い出したのが、以前、国内のバイオベンチャー投資に詳しい業界関係者による座談会で聞いた「ベンチャーの課題」でした。
 座談会の詳しい内容は、下記からお読みください。
2018年5月14日特集「ベンチャーキャピタル調査2018、座談会編」
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/082400016/051000053/

 座談会の中で、日本のバイオベンチャーの課題の1つとして挙げられていたのが、「良い経営者が少ない」というものでした。今まで研究に注力していた研究者が突然会社を経営するのは難しいし、かといってバイオ分野に全くの素人がいきなり入ると、技術やシーズに関する知識の量が乏しく、経営者より創業研究者の方が、立場が上になってしまうケースが少なくないそうです。

 「バイオベンチャーの経営者を生むにはどうすればいいのか・・・」と思っていたところに私が聞いたのが、神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科の取り組みでした。

 同研究科は、2016年4月に文理融合型の大学院として発足し、2018年4月から、博士課程後期を設置したかなり新しい大学院です。修士課程前期に入学した学生は、バイオ生産や膜工学、IT、先端医療などの研究を行いつつ、起業とベンチャー経営、ベンチャー企業の事業戦略やイノベーション選択、コーポレートファイナンス、知的財産法の実務などに関する授業を受ける必要があります。

 これらアントレプレナーシップを教えるのは、大手企業で新規事業を立ち上げたり、ベンチャーキャピタルを立ち上げるなどの経験を持つ講師陣です。博士課程後期ではさらに、具体的にシーズの事業化プランを設計して他の学生や教員らとディスカッションするなど、実学的な取り組みも行っているそうです。企業やベンチャーで働くなど社会人学生も多く学んでいるということでした。

 これまで理系の大学院生は、理系科目の授業を受けたり、自分の研究に注力することはあっても、起業や実用化のための実務を学ぶ機会はほとんど無かったと思います。今後は、神戸大の取り組みのように、理系の専門知識や経験に加えて、アントレプレナー志向の人材を育成するケースが日本で増えれば、「経営者が不足している問題」も解決に近づくかもしれません。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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