【日経バイオテクONLINE Vol.2945】

DIYバイオ発のビジネス創出への期待

(2018.06.15 11:00)
橋本宗明

 こんにちは。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。今週水曜日に「製造革命、インダストリー4.0の次に来る『バイオエコノミー』の衝撃」というタイトルの、主に製造業の方向けのセミナーを開催し、朝から夕方までたくさんの方に参加していただきました。どうもありがとうございました。

 セミナーで意図したのは、製造業の中に、バイオマスやバイオテクノロジーが入り込みつつある状況を紹介しようということです。その先行事例として、ここ20年の間に抗体医薬が市場で大きな存在感を確立し、蛋白質性の医薬品に、遺伝子治療や核酸医薬、再生医療、細胞医薬といったバイオプロダクトを加えると、もはや開発中の製品の半分近くを占めるといった「産業のバイオ化」を経験してきた製薬産業を挙げて、産業のバイオ化によって何が起こったのかを検証。なぜ製薬産業は産業のバイオ化が生じたのか、他の産業でもバイオ化が起こり得るのかどうかを考察しました。

 一般論として、バイオテクノロジー利用製品にはコストが高く、高付加価値化を狙うと市場が思ったよりも小さい、個体差があったり混合物だったりするので規格化が難しく工業利用に適していない、製品化までに時間がかかる半面、サイエンスの進展が早く、技術が陳腐化しやすい──などの課題があります。でも、パリ協定により温室効果ガスの排出削減が迫られていることなどを背景に、バイオマスプラスチックをはじめとするバイオマス由来製品の活用や、省資源のバイオプロセスの利用に世の中の目が向き始めています。

 一方で、次世代シーケンサーの登場によるゲノム解析コストの低下、ゲノム編集技術の登場、合成生物学分野の研究の進展などにより、サイエンスの面でもバイオプロダクツの産業利用を後押しする動きがあります。こうした状況から、今後、どういう分野でバイオの活用が進んでいくのかを、主に製造業のかたがたに考えていただこうというのがセミナーを開催した狙いでした。そして、まさにバイオマスの工業利用が始まりつつある事例としてセルロースナノファイバーについてを日本製紙の河崎雅行CNF研究所長に紹介いただき、また、細胞を使ったものづくりであるスマートセルインダストリーの研究開発状況を神戸大学の近藤昭彦教授に紹介いただきました。その上で、現実にはまだどんな産業が出てくるかも分からない混沌とした状況ながら、米シリコンバレーにDIYバイオを支えるエコシステムが登場し、バイオのスタートアップが続々と登場しつつある状況をデジタルガレージの枝洋樹執行役員に紹介いただいた上で、DIYバイオからのビジネス創出のイメージをつかんでもらうために、インテグリカルチャーの羽生雄毅代表取締役CEO、Jiksak Bioengineeringの川田治良代表取締役、東京大学大学院の長谷川愛特任研究員に講演してもらいました。

 長谷川さんはアーティストでバイオテクノロジーの研究開発をされているわけではありませんが、バイオテクノロジーを題材に様々な問題を提起する作品を発表されているので、講演をお願いしたところ、快く引き受けていただきました。ある意味SF的で、もしかしたらこんな世界がいずれやってくるのではないかと想像力を刺激する大変魅力的な作品をたくさん発表されているので、ぜひご覧ください。

http://aihasegawa.info/

 DIY発のビジネス創出は、まだまだどんな形に発展していくのかよく分かりませんが、かつてシリコンバレーがIT産業を生み出したようなことが、バイオ分野でも起こるのかもしれません。これからバイオが産業をどのように変えていくのか。メディアとしてウォッチしていきたいと考えています。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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