皆様こんにちは。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。まずは少し告知をさせていただきます。6月13日に東京・御成門で、「製造革命、インダストリー4.0の次に来る『バイオエコノミー』の衝撃」というセミナーを開催します。バイオテクノロジーが様々な産業の中で活用されていく状況を紹介するものです。ぜひご参加ください。

◆◆セミナー「製造革命、インダストリー4.0の次に来る『バイオエコノミー』の衝撃」
DIYバイオ、スマートセル、セルロースナノファイバーが変える世界
https://nkbp.jp/2K6mnzo

 さて先日、日本医療機器産業連合会(医機連)のメディアセミナーに参加してきました。薬価制度改革の影響などで日本の製薬企業は先行きの厳しさが指摘されていますが、日本の医療機器産業は堅調なようです。

 まず、日立製作所のヘルスケアビジネスユニットCEOでもある渡部眞也・医機連会長は日本の医療機器産業の状況として上場43社の業績を基に、売上高は2012年度から2016年度にかけて年平均7.7%で成長して3.7兆円となり、営業利益も同じく7.8%成長して0.54兆円になったことを紹介し、足元の業績が好調であると説明していました。

 その上で、営業利益の増減率から従業員の増減率を引いたものを「生産性指標」と定義し、生産性指標が2012年度から2016年度にかけて5ポイント以上改善した企業20社と、5ポイント以上悪化した企業19社について対売上高研究開発比率を未とところ、改善した企業の研究開発比率は平均6.7%だったのに対して、悪化した企業は平均3.9%であり、研究開発投資を積極的に行なった企業は生産性も向上したと紹介していました。難しい指標を持ち出した辺りはちょっと牽強付会な印象も受けましたが、いずれにせよ医療機器産業においてもイノベーションが重要だというわけです。

 で、そのイノベーションの方向として、単なる診断機器、計測機器ではなく、ソリューションや医療サービスの方向を志向しているという説明がありました。例えばX線CTやMRIなどの画像診断装置の場合、機器単体のビジネスからスタートして、画像データの管理の辺りまでは既に事業として取り組んでいるわけですが、今後の展開の方向として、電子カルテや地域医療連携支援システムのような、機器と各種サービスを組み合わせたシステムを構築したソリューション事業、また病院内のオペレーションの最適化を目指したスマートホスピタル、スマート手術室などを志向するというわけです。渡部会長は、「機器の性能向上はある程度成熟化してきた。病院のオペレーションに対してソリューションを提供していくことがこれからのチャレンジだ」と説明していました。

 内視鏡などでも同様で、胃カメラ、眼底カメラからスタートして、これからのチャレンジとしてはロボット手術支援システムや内視鏡AI診断が視野に入っているということです。脳波計や筋電計でスタートした生体モニタリング機器の分野も、遠隔モニタリングやスマートICUのように、より病院の中に入り込んでそのオペレーションに貢献していく方向を目指しているということでした。

 医療機器の分野はIoT化によって、病院運営の効率化に寄与する余地がまだたくさんあるということなのかもしれませんが、技術革新の方向がある程度明確に見えている印象を受けました。病院運営の効率化に寄与することで、国家的課題である医療費の抑制にも寄与しつつ、事業を拡大していくことが可能というわけです。

 一方で製薬産業はどうでしょう。医療費効率化のターゲットになるばかりではなく、効率化をビジネスチャンスと捉えることはできないでしょうか。イノベーションの価値の評価を求めることも重要ですが、いかにして医療の効率化に貢献する提案ができるかを、今後の事業展開の方向として検討してみるのも良いように思いました。

 最後にもう1つ別の話題です。昨日、タカラバイオの懇親会で、腫瘍溶解性ウイルスHF10について、国内のフェーズIIが終了して、現在、希少疾病用再生医療等製品として申請準備中であることが明らかになりました。腫瘍溶解性ウイルス製剤は欧米では既に承認されていますが、日本でも実用化が視野に入ってきました。イノベーションの実現に向け、着実に前進しています。