【日経バイオテクONLINE Vol.2933】

偶然の発見から、のちに17億円を調達するバイオベンチャーが発足

(2018.05.30 08:00)
高橋厚妃

 皆さんこんにちは。日経バイオテクの高橋です。最初にお知らせを1つ。以前、有料読者の皆様に回答をお願いしていました「利用状況調査」は5月27日に終了しました。ご協力いただきありがとうございました。

 先日、微細藻類を用いた食品の開発や販売を行うベンチャーのタベルモ(神奈川県川崎市、佐々木俊弥社長)が、合計17億円の資金調達に成功したことを発表しました。欧米のバイオベンチャーは、シリーズAの資金調達で50億円、100億円以上の調達に成功した話をよく聞くようになったとはいえ、国内のシリーズAで17億円を調達したというのは多いほうと言えるのではないでしょうか。

食べる藻類を開発するタベルモ、INCJと三菱商事から合計17億円を調達
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/18/05/22/04276/

 タベルモが扱うのは、スピルリナという藻類です。スピルリナに含まれている蛋白質量が非常に多く、スピルリナの単位面積当たりの蛋白質の含有量は、家畜やダイズなどと比較して非常に高いそうです。このスピルリナを、食用の新しい蛋白質源として活用しようというのがタベルモです。

 実はこれまでにもスピルリナは、健康食品などに応用されてきました。しかし、独特な苦みやえぐみがあることから、普段の食事に用いられる食材としては一般的に認知されてこなかったのが現状です。一方でタベルモは、スピルリナの製造工程を工夫することで、「無味無臭」にすることに成功。今までは静岡県でスピルリナを製造していましたが、今後ブルネイにも製造工場を建設します。今回の17億円の調達はそのため、というわけです。

 無味無臭にする鍵となるのは、製造過程でスピルリナを加熱処理しないこと。多くの企業では一般的に、殺菌のためにスピルリナを加熱処理します。そうすると、スピルリナの細胞が破壊されたり、各種成分が変性してしまい、まずくなるということでした。

 私が会見で驚いたのは、タベルモが、非加熱(生)のスピルリナの開発を手掛けることになったきっかけです。「試しに生でスピルリナを食べたところ無味無臭であることが分かった」という、いわば偶然の発見だったそうです。

タベルモはもともと、バイオテクノロジーをベースに事業を展開するちとせグループの1社として2014年に発足しました。育種技術などに強みを持つ、同グループ傘下のちとせ研究所(川崎市、藤田朋宏代表取締役CEO)で藻類の育種を行ううち、「生で食べてみよう」となり、無味無臭であることを発見した、というわけです。そこから、食品として製造するための技術を約5年かけて開発しました。

 ノーベル賞を受賞する研究などでも、実はセレンディピティが研究成果のきっかけだったという話があります。ただし、研究者がまずそれに気付くこと、そしてそれを成果に結びつけるには、積み重なった知見やノウハウ、サイエンスにとことん向き合う姿勢が重要であることもよく知られています。

 これが、約100人の社員のうち、70人以上がバイオの研究員である、バイオテクノロジー専門集団ちとせグループから生まれてきた事業か――と舌をまきました。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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