【日経バイオテクONLINE Vol.2903】

癌免疫療法のバイオマーカー探索競争に日本発の技術も参戦

(2018.04.13 08:00)
久保田文

 おはようございます。日経バイオテク副編集長の久保田です。免疫チェックポイント阻害薬である抗PD1抗体、抗PD-L1抗体が複数承認されたことで、癌種によってはそれぞれの使い分けを考える時期に入ってきました。

 国内ではこれまでに、小野薬品工業の抗PD1抗体「オプジーボ」(ニボルマブ)、MSDの抗PD1抗体「キイトルーダ」(ペムプロリズマブ)、メルクセローノとファイザーの抗PD-L1抗体「バベンチオ」(アベルマブ)、中外製薬の抗PD-L1抗体の「テセントリク」(アテゾリズマブ)が承認されています。加えて、2018年4月25日には、アストラゼネカの抗PD-L1抗体「イミフィンジ」(デュルバルマブ)の承認の可否が、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会で審議される見通しです。

 現時点でも、例えば、非小細胞肺癌のセカンドライン(切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌)には、オプジーボ、キイトルーダ、テセントリクが使用できる状態です。今後も、併用療法も含めて、様々な癌種に様々な治療法が認められていくことを考えれば、その時々で、個々の患者の状態に適した治療法を選択できる技術の確立が求められています。

 これまでに、キイトルーダで使われているPD-L1に加え、マイクロサテライト不安定性(MSI)、腫瘍遺伝子異常総量(Tumor Mutation Burden:TMB)、遺伝子発現プロファイルなど、免疫チェックポイント阻害薬のバイオマーカーとしては幾つかの候補が挙がっており、世界では、製薬企業はもちろん、癌のクリニカルシーケンスを手掛ける企業や診断薬企業なども開発に乗り出しています。

 もっとも、それぞれの免疫チェックポイント阻害薬が効くかどうかは、複数のステップから成る、患者の癌免疫サイクルがどうなっているかと深く関わっていると考えられます。そのため、専門家からは「1つのバイオマーカーで全てが説明できるといったことにはならないだろう」「複数のバイオマーカーを組み合わせて、免疫のステータスを推しはかることになるのではないか」といった声が聞こえてきます。

 今、こうしたバイオマーカー候補の1つとして、日本発の技術の開発が進められています。埼玉医科大学国際医療センター呼吸器内科診療部長の各務博教授が見出したバイオマーカー、CD62Lがそれです。具体的には、末梢血中のCD62L低発現かつCD4陽性のエフェクターT細胞と、制御性T細胞の割合を測定し、効果を予測するという技術です。埼玉医大発のベンチャー企業を介して、先日、シスメックスが実施権を導入しました。今後、こうした技術の開発動向にも注目していきたいと思っています。

シスメックス、免疫チェックポイント阻害薬の効果予測技術の実施権導入
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/18/04/04/04086/

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