【日経バイオテクONLINE Vol.2869】

バイオ×ITの境界領域の熱気

(2018.02.23 08:00)
橋本宗明

 皆様、おはようございます。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 先日、IT関連を中心に様々な事業を展開しているデジタルガレージが開催した、バイオ×ITのミートアップに参加してきました。この日のテーマは腸内細菌叢×AIで、腸内細菌叢とAIのそれぞれについてざっくりとしたレクチャーがあった後に、参加者が幾つかのグループに分かれてグループディスカッションを行い、腸内細菌叢とAIを活用したビジネスプランを発表するというものです。

 ビジネスプランといっても、短時間で思いつきのアイデアを出しあって、「それ面白いね」と軽いノリで膨らませていく感じなので、本当に事業化できるようなプランがまとまるわけではありません。むしろ、「バイオ×IT」の境界領域で起業を考えたり、新規事業を探している人たちが参加し、参加者同士が知り合うことに意義があるイベントだと理解しました。その意味で、わいわいがやがやと熱気のある雰囲気で議論ができて楽しかったです。

 ちなみに、昨日のイベント案内は下のリンク先をご覧ください(リンクが切れたらごめんなさい)。デジタルガレージでは定期的にこのバイオ×ITのミートアップを開催する予定とのことでしたので、興味がある人は一度顔を出してみてもいいかもしれません。

https://peatix.com/event/349371

 AIに関しては、以前のメールマガジンでAI創薬について簡単に紹介しましたが、創薬研究の中でも様々なところにAIの利用が提案されています。ただ、AIが賢くなるためには質の高い大量のデータが必要であり、正解と不正解がある程度はっきりしている分野である必要があります。そのため、創薬では化合物の構造活性相関やADMETの予測などに利用できるのではないかといった声を聞きます。ただ、化合物の立体構造そのものを扱うには相当な計算能力を必要とするようで、構造式を何らかの定義に基づくフィンガープリントに変換したり、一定のルールに基づいて文字列に置き換えたりして学習させているのが現状のようです。分岐構造を取るような複雑な構造式を文字列に置き換えて、本当に正しく学習させていることになるのかと疑問も湧きますが、「意外とうまくいく」という声も聞きます。ただ、実際には化合物の立体構造の扱いにくさを克服する技術革新が必要になるのではないかと考えます。

 これに比べれば、恐らく画像診断や手術の支援などの分野の方が、AIの実用化は早いのでしょう。腸内菌叢も、その分布や量と、疾患や健康状態との関係に関するデータが豊富に集まれば、AIが活躍する可能性は大いにありそうです。問題はそのデータがまだ十分には無いことで、解析手法の標準化によるデータの集積が重要だと思います。

 いずれにせよ、バイオ×AI、バイオ×ITなど、技術の境界領域から大きな技術革新が出てくる可能性があります。日経バイオテクでは、創薬や再生医療などのバイオ関連の話題を深く追いかけるだけでなく、境界領域の動向もしっかりとウォッチしていきたいと思います。

 

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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