【日経バイオテクONLINE Vol.2845】

“ケミカルバイオロジー”という新しい風

(2018.01.19 08:00)
久保田文

 おはようございます。日経バイオテク副編集長の久保田です。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 昨年来、業界関係者から、「ケミカルバイオロジーが重要」という話をよく聞くようになりました。再生医療や癌や分子生物学など、バックグラウンドの異なる研究者が似たような指摘をしていたので、印象に残っています。2017年5月、スイスNovartis社のノバルティスバイオメディカル研究所(NIBR)を取材した際も、構造生物学や有機化学、分子生物学の研究者を集めた新たな探索ユニット、「Chemical Biology & Thera-peutics (CBT)」と呼ばれる組織を新設したと伺いました。

キーパーソンインタビュー
Novartis社ノバルティスバイオメディカル研究所 Ann Taylor氏に聞く
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/082400018/062100012/

 ケミカルバイオロジー(chemical biology)について、正面を切って取材をしたことはないのですが、個人的には、「化学のアプローチや技術を生物システムの研究に活用し、その理解に役立てる」といった概念であると理解しています。もっとも、ケミカルバイオロジーの概念が最初に提唱されたのは、20年ほど前のこと。今日に至るまで、構造解析技術や遺伝子編集技術など、ケミカルバイオロジーに磨きをかけるさまざまな技術が生み出され、その概念自体も日々進化しているようです。

 実は今、ユビキチン―プロテアソーム系を狙った創薬について取材を進めているのですが、そこで重要なキーワードとして挙がってくるのも、やはりケミカルバイオロジーです。ある研究者は、ケミカルバイオロジーを創薬に応用する上で重要なのは「化学と生物学の両面から、同じように深く理解を進め、攻め方を考えること」と話していました。なんとなく、化学と生物学、それぞれの専門家が専門性の上に立って、互いに融合することが必要なのだろうと解釈しています。

 もっとも、ライフサイエンス業界、ヘルスケア業界において、ケミカルバイオロジーのアプローチが、いつ頃、どの位、製品として開花するかについて、現時点では明確な答えを持ち合わせていません。未知数だと表現した方が適切でしょうか。ただ、一つ確かなのは、業界に新しい風が確実に吹き始めているということです。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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