【日経バイオテクONLINE Vol.2830】

年の瀬にまとまった化血研の事業譲渡

(2017.12.22 10:30)
久保田文

 みなさん、こんにちは。日経バイオテク副編集長の久保田です。今年もすっかり年の瀬ですね。

 先日公開した本誌最新号のリポートで、韓国のゲノム医療について取り上げました。詳しくはぜひお読みいただければと思いますが、2017年3月から韓国政府が始めたのは、自家調整検査(LDT)と同様の枠組みを作り、多くの患者に安くパネル検査を提供しようという取り組みです。日本にとって、参考になるところもあるので、ぜひお読みください。

リポート
韓国で始まった遺伝子パネル検査の保険適用
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/082400017/121300023/

 さて、今日の本題は化血研です。おそらく、2017年末までにといった目標があったのでしょう。化学及血清療法研究所(化血研)が、事業譲渡に向け、熊本県の企業グループ、明治グループと基本合意書を締結しました。本誌ではこれまで、不正製造の発覚を受けて、厚生労働省が化血研に強く事業譲渡を求めてきたことや、化血研が反論しているにもかかわらず、エンセバックを含めた35製品56品目の承認に関して、宙ぶらりんになっていることなどをお伝えしてきました。

特集
迷走を続ける化血研問題
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/082400016/092000036/

化血研、3事業を製薬と地元企業連合などから成るコンソーシアムへ譲渡へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/12/12/03615/

化血研、3事業を新会社へ譲渡、明治HDが連結子会社化へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/12/12/03621/

化血研、3事業を譲渡するのに“一部”事業譲渡のワケ
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/12/12/03620/

化血研、明治HD、新会社への事業譲渡に向け熊本県庁を表敬訪問
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/12/13/03624/

 本誌は、「いわば事業譲渡に積極的に応じない化血研に対し、厚労省が製品の許認可権を盾に強引に譲渡を迫っている構図」と指摘していましたが、実際、基本合意書の締結を受けた後の熊本県知事の表敬訪問でも、そうした構図を感じさせる一幕がありました。木下統晴理事長が、「1日も早く製品を安定供給するため、今回の事業譲渡に至った」という主旨の挨拶をしたのです。

 言うまでもありませんが、本来であれば、化血研の事業運営と製品の許認可は別の話。この挨拶を聞いた時、木下理事長は、事業譲渡なしには、35製品56品目の宙ぶらりん状態を解消できないと考えていたのだろうと感じました。

 表敬訪問では、今回の事業譲渡のスキームについて、明治ホールディングスが、2017年6月、7月頃に県を通じて提案を受けていたことも判明しました。木下理事長が、早川尭夫前理事長を事実上解任したのは、2017年5月30日ですから、そこから1カ月もたたないうちに、事業譲渡を決め、それに向けた今回のスキームが動き出していたことになります。木下理事長が前理事長を解任した時点で、今回のスキームによる事業譲渡が既定路線になっていたのではと考えざるをえませんでした。

 もっとも、今後、化血研から事業の譲渡を受けた新会社経営のかじ取りがうまくいくかどうかは見通せません。新会社の議決権付株式は、明治グループ(明治ホールディングスと製薬子会社のMeiji Seikaファルマ)が49%、熊本県の企業グループ(再春館製薬、熊本放送など7社)が 49%、熊本県が2%保有することになりました。しかし、新会社のトップと取締役の過半数は明治グループが出すことになっており、新会社は明治ホールディングスの連結子会社となります(取締役の過半を出す実質的支配者のため)。

 つまり、明治グループが過半を占める取締役会と、熊本県関係者が過半を占める株主とで、「ねじれ」の状態が生じるのです。ある業界関係者は「株主は、熊本県への配慮を常に求めることになるだろうが、取締役会の方針と食い違わないとも限らない。将来の火種になるのではないか」と指摘しています。基本合意書には、不採算製品の製造・販売の維持などが努力義務として盛り込まれています。さまざまな制約が付けられる中、果たして事業譲渡が実現し、新会社は事業を維持できるのか。今後も引き続き、注視していきたいと思います。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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