【日経バイオテクONLINE Vol.2823】

患者の口コミと臨床試験

(2017.12.13 08:00)
小崎丈太郎

 慶應義塾大学医学部消化器内科が中心となった多施設共同試験によって、生薬の青黛(せいたい)が潰瘍性大腸炎の治療に有効であると証明されました。この検証結果は2017年11月に消化器病学の一流ジャーナルGastroenterologyオンライン版に掲載されました。青黛は藍染の染料として使われてきたほか、健康食品としても使われてきました。以前より潰瘍性大腸炎の患者さんの間では口コミで「効く」という情報が広がっており、慶應グループは小規模臨床試験、動物試験を経たのちに国内33施設が参加したプラセボ対照臨床試験を実施、有効性の確認に成功しました。「有効」という結果を目にしたときは、同医局は歓声に沸いたそうです。詳細は近く紹介します。

 インターネットなどで「潰瘍性大腸炎に効く」という話を目にして、「そのように扱うべきか」を金井隆典教授は思案したそうです。最終的に同教授らは、青黛に含まれるインジゴ、インジビルといった成分が粘膜治癒促進物質として世界的に注目されているインドール化合物であったことに注目、研究を進める判断をしました。
 いわば、患者の口コミが結果的に、その有効性を証明する医学研究の口火を切った格好です。しかし、このような事例はリスクも伴います。臨床研究が進展している一方で、この研究に参加していない患者たちの中には、個人入手し、使用する人々もいました。そして、臨床研究に使われている量の何倍もの量を使用していた患者の中から肺動脈性肺高血圧症を発症する事例が報告されました。
 金井教授らは予定数に達する前に症例登録を自主的に打ち切りました。幸いにもそれまで登録していた患者さんのデータだけでも結論を導ける解析をすることができました。

 この臨床試験は、患者さんの口コミを医学の専門家がどのように評価して正式な医学研究につなげるべきか、またその過程で研究計画の外に想定外のリスクが潜んでいることなどの教訓を投げかけています。今後何よりも大切なのは、「潰瘍性大腸炎に青黛が効いた!」という情報だけではなく、どのような患者にどのような用法用量が正確に確保されたときに限って有効性が期待できるという情報も一緒に患者さんに届けることではないかと思います。言い換えると、リスクコミュニケーションが欠かせないということになります。

 

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