【日経バイオテクONLINE Vol.2815】

これまでの医療と精密医療の違いを考える

(2017.12.01 08:00)
久保田文

 おはようございます。日経バイオテク副編集長の久保田です。先日、癌ゲノム医療について特集を執筆した関連で、ここ1カ月、「精密医療(Precision Medicine)とは何なのか」、「日本において精密医療を国民皆保険制度に押し込められるのか」――について、考えています。

 前回のメールでもお伝えしたように、精密医療のベースになっている、1人1人の患者に適した治療を提供するという考え方は、ポピュレーションベースのEvidence-based medicine(EBM)と一線を画するものです。そして、その精密医療を社会実装するには、これまでの医療とはいろんな意味で違った対応が必要になります。

 具体的には、(1)治療における検査の重要性が相対的に大きくなる(2)目の前の患者にとって(患者自身にとって)最適かどうかという観点から治療方針を決めることになる、(3)検査にかかる費用が大幅に増える――などが生じると考えられます。そのためには少なくとも、(1)検査の分析学的妥当性や臨床的妥当性を担保する、(2)精密医療を受け入れるための医師と患者の関係を構築する、(3)これまで以上の財源を検査に振り向ける――といったことが求められることになるわけです。

 癌ゲノム医療を巡る昨今の動きを見る限り、日本が精密医療を取り込んでいく方針であることは間違いないようですが、かといって、上記のような点について、これまでとは違った対応が進められているわけでもありません。むしろ国内では、精密医療の入り口である癌ゲノム医療について、これまでの保険診療の枠組みになんとか押し込めようという努力が続けられており……。混合診療の必要性や日本版自家調整検査法(LDT)を確立する必要性など、もっともっと、根本的な議論を進める必要があるように感じています。

 ちなみに今回、こうした問題意識について、業界の方々と共有する機会をいただきました。12月8日、日本遺伝子診療学会が開催する「遺伝子診断・検査技術推進フォーラム 公開シンポジウム 2017」のパネルディスカッションに登壇させていただきます。本日、その打ち合わせがあったのですが、いろんな意味で刺激的でした。

■■■遺伝子診断・検査技術推進フォーラム
           公開シンポジウム 2017■■■

日時:2017年12月8日(金)10:00~17:30
会場:コクヨホール(品川)
http://www.congre.co.jp/gene/frame/f_forum.html

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 最後に、先日公開した癌ゲノム医療の特集と、特集連動のインタビュー記事が出揃いましたので、改めてご紹介しておきます。

特集◎どうなる日本版の癌ゲノム医療
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/082400016/111500040/

特集連動◎どうなる日本版の癌ゲノム医療
シスメックス、自由診療向け癌クリニカルシーケンス検査の提供断念
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/11/17/03494/

特集連動◎どうなる日本版の癌ゲノム医療
近大西尾氏、標準治療のある固形癌へのパネル検査提供には課題
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/11/17/03495/

特集連動◎どうなる日本版の癌ゲノム医療
国がん藤原氏、「癌遺伝子パネル検査普及への最終関門は財源」
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/11/17/03497/

特集連動◎どうなる日本版の癌ゲノム医療
シスメックス辻本氏、「日本なりの癌ゲノム医療の在り方必要」
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/11/17/03496/

特集連動◎どうなる日本版の癌ゲノム医療
新潟大若井氏、「パスウェイ全体見て方針決める治療戦略が重要になる」
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/11/17/03498/

特集連動◎どうなる日本版の癌ゲノム医療
中外製薬、米Foundation Medicine社のパネル検査は承認目指す方針
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/11/17/03499/

特集連動◎どうなる日本版の癌ゲノム医療
木沢記念病院、自由診療で癌クリニカルシーケンス検査の提供を開始
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/11/17/03500/

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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