【日経バイオテクONLINE Vol.2801】

注目される心不全の再生医療研究 阪大・澤教授も登壇する公開セミナーのご紹介

(2017.11.10 08:00)
小崎丈太郎

 日本の心不全患者は現在100万人と推定されていますが、今後も増え続け、2030年には130万人に達するという推計もあります。この患者の増加は、標準的な薬物療法の確立や埋め込み型除細動器などの非薬物療法が進歩し、予後が改善したことが要因として挙げられます。長寿国家である我が国の今後の課題は健康寿命の延伸です。そのためには今後も良質で、しかも受益者が膨大な数に達することを考慮した、経済的な心不全治療を追究することが望まれています。

 標準的な心不全治療の一角に再生医療が食い込めるかどうか。その試金石ともいえる臨床研究が2018年にも始まろうとしています。第一三共と大阪大学発のベンチャー「クオリプス」(東京都中央区)が重症心不全患者を対象に、他家iPS細胞由来の心筋シートの臨床研究を開始するというのです。心臓移植や人工心臓の装着以外に有効な治療法が無い重症心不全患者に、同シートを移植して心不全状態の改善を目指します。
同社のチーフ・サイエンティフィック・アドバイザーで、同技術の開発に中心的な役割を果たしてきた大阪大学大学院医学研究科心臓血管外科の澤芳樹教授を含めた心不全医療の専門家たちによるセミナーが、日本循環器学会との共催で、11月19日(日)に東京コンベンションホール(東京都中央区)を会場に開催されます。参加料は無料ですので関心がある方は、下記のサイトから登録のうえ足をお運びください。
http://www.nikkeibp.co.jp/aging/shinfuzen/seminar/17111901/index.html

 心筋シートによる心不全の治療では既に2016年にテルモが「ハートシート」を発売し、この分野のパイオニアとなっています。ハートシートは保険適用されていますが、患者本人の細胞(自家細胞)を元に培養するために手間やコストがかかるところが泣きどころです。
iPS細胞を使った再生医療では他家が主流です。理化学研究所の加齢黄斑変性症の再生医療も他家に舵を切りましたし、慶應義塾大学が臨床研究の準備を進める脊髄損傷の治療研究も他家iPS細胞から誘導した神経幹細胞を利用します。再生医療でも費用対効果が鋭く問われるようになってきました。それは再生医療が夢の医療の段階を卒業して、新しいリアルな医療としての有用性を問われる時代になってきたということを意味しています。
 

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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