【日経バイオテクONLINE Vol.2782】

第3のバイオ市場を創出できるか

(2017.10.13 08:00)
橋本宗明

 皆様、おはようございます。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 11日から横浜市でBioJapan2017が始まりました。製薬企業とバイオベンチャーなどとのマッチングサービスが充実したことや、再生医療Japan2017と併催したことに加え、今年は厚生労働省が主催するジャパン・ヘルスケアベンチャー・サミット2017も同時開催となり、例年以上に盛り上がりを見せています。日経バイオテクもブースを出して試読の受け付けなどを行っていますので、時間が許される方はぜひお立ち寄りください。

 今年のBioJapanで注目していることに、ものづくり系バイオの話題があります。バイオ産業を市場として捉えた場合、現在日本で大きな市場を有しているのは遺伝子組換え作物とバイオ医薬品です(遺伝子組換え作物が日本で大きな市場を有しているというと首を傾げる人がいるかもしれませんが、飼料や油糧用の作物として大量に輸入されています)。バイオ医薬品は微生物や動物細胞を使って組み換え生産されているので「ものづくり系バイオ」の一部なわけですが、ここでは市場という観点で医薬品や再生医療などの医療用途を除き、化成品や燃料、食品素材などを組換え技術をはじめとするバイオ技術を用いて製造していくこと、およびバイオマスを製造業の中で利用していくことを「ものづくり系バイオ」と称することとします。このものづくり系バイオが近い将来、組換え農産物と、バイオ医薬に続く第3の巨大市場を形成する可能性があると考えて、大いに注目しているわけです。ちなみに、当社の技術系媒体の編集長が集結して技術トレンドをまとめた「世界を動かす100の技術」という書籍を近く発行しますが、そこでも私は「生物を利用した物質生産」として、ものづくり系バイオの話題を紹介しています。

「世界を動かす100の技術」はこちらをご覧ください。
http://ec.nikkeibp.co.jp/item/books/P55470.html

 さて、BioJapan初日に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機(NEDO)が開催したセミナー「バイオ×デジタル時代の新たなバイオ戦略―スマートセルインダストリーの創出と更なる可能性に向けて―」というのがものづくり系バイオの話題に該当すると考えて拝聴しました。その第一部では、経済産業省、農林水産省、環境省、文部科学省のバイオ関連の担当者が登壇し、さらにパネルディスカッションではこれに内閣府の担当官も加わって、議論をしました。政府が今年6月に発表した「未来投資戦略2017」には、「バイオ・マテリアル革命」に関して「新たな市場形成を目指した戦略を策定する」と記載されています。恐らくはここに登壇した人たちの部署が中心になって新しい戦略を策定するということなのでしょう。

 聞いていると、各省庁で取り組んでいる内容に共通する部分があるものの、ちょっと方向感が違うのではというものも混在していて、どうまとまっていくのかなと思う部分はありました。ただ、少なくともバイオベースの産業創出で一致したという点では大きな前進だと思います。AMEDの下でひとまとまりになった医療と同じようにはいかないかもしれませんが、医療以外のバイオ分野でも、今後、省庁連携が進展することに期待したいところです。

 それから、セミナーのタイトルに「バイオ×デジタル」とあるように、新しい戦略はデジタル色が強いものになると思われます。環境親和性のある「バイオ」の研究開発が、「デジタルとの融合によって加速する」というコンセプトはなんとなくわかるものの、具体例がないとなかなかピンと来ません。人工知能(AI)を用いて学習させれば人知をしのぐアイデアが出てくるといわれても、何を学習させるのか、そのデータは誰がどうやって作る、もしくは集めてくるのか、といったところまでないと、しっくりと来ません。

 生物をデジタル化して理解するオミックス技術の進展により、出来ることがこれまでと格段に違っているのは確かでしょう。昨日は、デンマークNovozymes社の研究者が、土壌中のマイクロバイオームを解析して農作物の栽培に適した微生物叢を特定し、トウモロコシの収量を大幅に高める土壌改良剤として事業化していることを紹介していました。腸内菌叢を整えるように、土壌中の菌叢を整えることで、農業も大きく変革していく可能性があります。AI、IoTといった流行りの言葉が飛び交うのではなく、地に足の着いた実例を盛り込み、バイオ市場が拡大していくと実感できるような産業戦略が策定されることを期待しています。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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