【日経バイオテクONLINE Vol.2728】

製薬企業の売上収益ランキングから見えること

(2017.07.21 11:00)
橋本宗明

 皆様、こんにちは。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 編集部では例年、世界の製薬企業の年次報告書などのデータに基づき、売上収益のランキングを作成しています。2015年度(2015年7月から2016年6月に期末を迎える会計年度)のランキングは日経バイオ年鑑2017に掲載しました(ONLINE版をお読みいただけます)。

世界の製薬企業売上収益ランキング2015年度
https://bio.nikkeibp.co.jp/atclyb/17/120700005/

 2016年度(2016年7月から2017年6月に期末を迎える会計年度)のランキングを、来週月曜日に発行する日経バイオテク2017年7月24日号に掲載しました。その内容の一端を紹介します。

 ランキング作成の対象としたのは、年次報告書などで医療用医薬品セグメントの開示を行っており、2016年度に20億ドル以上の売上収益があった企業で、医薬品以外の事業を手掛ける企業も含めています。

 医療用医薬品を製造し、20億ドル以上の売上収益がある企業は世界17カ国に64社ありました。2015年度の調査に比べて2社の増加です。国別に企業数を見ると、日本が19社で、米国の14社を上回る結果となりました。ただし1社当たりの平均売上収益を計算すると、米国が250億ドルを超えるのに対して日本は約87億ドルです。英国、ドイツ、フランス、スイスなど欧州の主要国も企業数は多くても4社ですが、1社当たりの平均売上収益は約150億ドルから約300億ドルで、日本の87億ドルというのは国別では17カ国中10位になります。

 このデータは売上収益20億ドル以上というところで一度選別を掛けた上での平均値であることを注意してください。また、医療用医薬品以外の事業を営んでいる企業も含まれていて、日本企業では日本たばこ産業や東レ、旭化成、明治ホールディングス、味の素などが上位に顔を出しています。兼業企業がランキングに入っているのは、日本が多い傾向にあります。欧米企業で、医療用医薬品の売上収益が全売上収益の半分以下という企業は、ドイツBayer社とドイツMerck KGaA社、米Abbott Laboratories社ぐらいでしょうか。従って、医療用医薬品事業のみの1社当たり平均売上収益を計算すると、日本の順位はさらに低下する可能性があります。

 医療用医薬品セグメントの情報を開示し、2016年度に20億ドル以上の売上収益があった企業というバイアスはかかっているものの、日本の製薬産業で企業の集約化が遅れていることを如実に示したデータといえるのではないでしょうか。ちなみに医療用医薬品事業のみの売上収益ランキングを見ると、20億ドル以上の売上収益がある企業は世界で49社あって、うち半数強の25社は100億ドル以上の売上収益だったのに対して、日本企業は20億ドル以上は11社ありましたが、うち100億ドル以上は武田薬品工業とアステラス製薬の2社だけでした。

 もちろん、売上収益の規模が大きい方がいい会社だというつもりは全くありませんが、抗体医薬、核酸医薬、ペプチド医薬、細胞医薬などモダリティー(治療手段)が多様化していることや、日本市場の停滞によりグローバル展開の必要に迫られていることなどを考慮すると、規模が競争力を左右する要素は以前より増大しているのは確かでしょう。一方で、20億ドル以上の企業ランキングには、欧米のバイオベンチャーやインド企業など新しい顔ぶれがも徐々に増えています。日本の製薬産業が世界で存在感を発揮し続けるためには、大胆な事業再編やM&Aなどに打って出るしかないと今さらながらに思った次第です。

 2016年度の世界の製薬企業売上収益ランキングの記事は来週月曜日に公開しますので、どうぞご覧ください。本日はこの当たりで失礼します。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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