【日経バイオテクONLINE Vol.2726】

地域医療連携とゲノム医療、AI医療

(2017.07.19 08:00)
小崎丈太郎

 国立大学が年々運営交付金を減らされていることはよく知られています。
 その影響がじわじわと表われているようです。
 そのしわ寄せが人事に現れています。新潟大学は昨年から2年間をめどに教員人事を原則凍結する方針を公表して注目されました。国立大学協会に調査によれば、定員退職する教員の補充を一部凍結している国立大学は少なくとも33大学あるとのことです。調査から漏れている大学もあると思われるので、もっと多くの大学で人事凍結の措置が取られていると思います。
 このような状況を、先日お話を伺ったキヤノングローバル戦略研究所の松山幸弘・研究主幹は「兵糧攻め」と称していました。

 日本の財政は構造的に破綻している状態ですから、やむを得ない側面もあります。もっと深刻なのは少子化という問題です。1990年に203万人を数えた日本の18歳人口は、2015年に122万人と半減しています。2035年には100万人を割り込むことが予想されます。国立大学(私立も同じですが)が将来、現在の陣容を維持できないことは明らかです。
 一時、同じ県内の総合大学と医大の統合が行われました。

 国立大学の運営という観点からは、キャッシュフローのある附属病院は大きな意味を持っています。しかし昨年、文部科学省は大学設置基準を改正して、附属病院を大学から分離することを認めました。これが何を意味するのか行方を見守りたいと思います。松山・研究主幹は「こうした動きは、地域に分散する医療資源が集約する引き金(トリガー)になる」と予測していました。

 日本の医療の問題に投資が重複し過剰投資があります。一例として注目されているのは、ロボット手術とされています。「患者が都会の大病院に流れる」などの理由で、中小病院が手術ロボットを入れている例があります。日本の医療にとって大きな課題である重複投資を避け、患者情報を共有して、効率よい医療を進めるためにも、医療機関の連携が有力視されています。厚生労働省も医療法を改正して、医療機関が連携した地域医療連携推進法人を増やす施策を進めていますが、計画通り進んでいません。

 こうした医療の広域連携はバイオテクノロジーが医療分野で十分活用される上でも大きな意味を持っています。ゲノム医療も人工知能(AI)の活用もある程度広域化した医療圏でより効果的に運用される可能性があるからです。兵糧攻めに対して、ひたすら籠城で耐え忍ぶだけではなく、医療圏の拡大に攻めの一手を投じる姿勢が必要なのかもしれません。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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