【日経バイオテクONLINE Vol.2722】

ゲノム情報は誰のもの?

(2017.07.12 08:00)
橋本宗明

 皆様、おはようございます。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 まずは日経バイオテクONLINE法人版(PharmaBusiness)をご利用いただいている方へのご案内です。本誌に2号に一度連載しているパイプライン研究について、2017年7月10日号よりパイプラインデータベースと連動したサービスの提供を開始しました。当該記事に掲載しているパイプライン研究「マイクロバイオータ」の記事の中間辺りに「表2」として、主な開発品目をいつものように掲載しています。この表2の後ろに、「>> 各開発品目の詳細はパイプラインデータベースでご覧ください。」というリンクボタンを設けました。リンクボタンを押していただくと、順が少し違っているかもしれませんが、本誌に掲載したものと同じ品目の一覧表示画面が出て、「詳細表示」と書かれた青いボタンを押すと、臨床試験番号や備考情報も含めた各品目の詳細情報が表示されます。つまり、記事とパイプラインデータベースとを連携させて、紙には掲載しきれない詳細情報もONLINEで提供できるようにしたわけです。なお、詳細情報の閲覧には、2ポイントを消費しますのでお気を付けください。

パイプライン研究 マイクロバイオータ
http://nkbp.jp/2tCl7i7

 それから、日経バイオテク7月10日号の「若手研究者の肖像」の記事では、「細胞折り紙」というビジュアルな話題を扱ったので、ONLINEの記事に動画を掲載しました。こちらは日経バイオテクONLINEの会員であればご覧いただけます。

北海道大学高等教育推進機構新渡戸スクール 繁富(栗林)香織 特任准教授
http://nkbp.jp/2t89KKY
法人版はこちら http://nkbp.jp/2v6hu1s

 さて、6月半ばにゲノム関連のイベントに参加する機会がありました。インフォマティクス系の若い人たちが中心のイベントで、膨大に生み出されつつあるゲノム情報を用いて、何らかの事業を立ち上げようとしているスタートアップの人たちも多数参加していました。日頃取材しているバイオ関連の学会やセミナーと少し違った印象を受けたのは、参加者の年齢層によるものか、企画の斬新さによるものか分かりませんが、いずれにせよ大変な熱気を感じました。

 イベントで議論の1つのテーマとなったのは、「ゲノム情報は誰のものか」ということです。もちろん、ゲノム情報はそのゲノムを有する人、つまり試料を提供した人のものであって、研究や産業への利用にはその人の同意が必要なのは言うまでもありません。

 ただし、その一方でゲノム情報に含まれる疾患の発症リスクなどの情報は、必ずしも本人が知りたい情報のみとは限りません。仮に本人が知りたい情報であっても、血縁者が望まないケースも考えられ、情報の取り扱い方にも配慮が必要です。ゲノム解析の結果、単一遺伝子疾患などの情報が得られた場合には遺伝カウンセリングを提供するなどの対応が必要となります。偶発的所見が得られた場合にどう対応すればよいかなど、医療目的で遺伝子を取り扱う中でも課題は多く残っています。ただ、こうしたゲノム情報の取り扱いの難しさがゲノム関連のビジネスの阻害要因になっているのではないか、ということが「ゲノム情報は誰のものか」という議論の根底にあったのだと思います。

 もちろん、個人情報や倫理面への配慮がないがしろにされていいわけではないですし、遺伝情報が何らかの差別につながるような事態も避けるべきです。ただ、一方で7月10日号のリポートでも取り上げたように、ゲノム解析技術の革新はまだまだ続いており、解析コストはさらに下落し、技術的には誰もが簡単に自分のゲノムを解析できるようになると思われます。そうなったときに、もっとみんなが自分のゲノム情報に関心を持ち、ゲノム情報が活用されるような社会になるのは望ましいことだと思います。

 ただし、現状ではウェアラブルを身に付けてライフログを記録するだけでは何も起こらないように、ゲノムを解析するだけでは何も起こりません。自分のゲノム情報を知ることに何らかのメリットを感じることができるようなサービスを、事業者が提案できるかどうかが肝心なのだと思います。

 本日はこの辺りで失礼します。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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