【日経バイオテクONLINE Vol.2719】

“法律に則った自由診療の再生医療”の分かりにくさ

(2017.07.07 08:00)
久保田文

 おはようございます。日経バイオテクの久保田です。本題に入る前に少しだけ告知を。開催が来週に迫った、本誌主催のセミナー「ゲノム編集が生み出す新ビジネス」のお知らせです。国内では、ゲノム編集(操作)技術をベースとしたベンチャー企業が複数立ち上がっていますが、今回のセミナーでは、そのうち4社から講演をいただくことになっています。私もパネルディスカッションに参加します。ぜひ、お越しください。

 詳しいプログラムはこちらから↓
 http://www.nikkeibp.co.jp/seminar/atcl/med/170710/

 さて本題です。2017年7月4日、日本再生医療学会が緊急会見を開きました。国内11カ所の医療機関が、第一種再生医療等提供計画を提出しないまま他家の臍帯血を使った再生医療を実施し、厚生労働省から停止命令を受けた事案のためです。11カ所のうち、5カ所の医療機関に再生医療学会員が所属していたことが判明。学会として除名を含めた厳しい処分を行う方針を示すため、会見が開かれたようでした。会見には、複数台のテレビカメラ、数十人の記者が集まり、社会の関心の高さがうかがえました。

 再生医療学会、再生医療新法違反による医療機関の摘発受け緊急会見
 https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/07/04/02917/

 と同時に感じたのは、再生医療新法の下、自由診療の枠組みで実施されている再生医療と、エビデンスに基づいて有効だと言える再生医療が、イコールではないことが、一般社会からみると“分かりにくい”ようだということです。今回摘発された医療機関では、癌治療やアンチエイジングの目的で他家の臍帯血が投与されていました。対象患者や詳しい治療内容については私も把握していませんが、会見では何人かの記者から、「他人の臍帯血は何に有効なんですか」とか「自由診療で実施されている再生医療にはエビデンスがあるんですか」とかいった質問が出されました。

 会見に出席した江副幸子幹事や澤芳樹理事長からは、白血病に対して臍帯血移植が行われていることや、学会が主導して臨床研究など一部の再生医療についてデータの蓄積を進めていることなどが紹介されましたが、当然、自由診療の枠組みで実施されている再生医療の有効性については言及がありませんでした。

 再生医療新法ができたことで、国内のどこでどういった再生医療が行われているか一元的に把握できるようになったことや、感染症の有無など細胞の品質が一定程度担保されるようになったことなどは評価すべきことです。ただし、一方で“法律に則った自由診療の再生医療”という、一般社会からは分かりにくいカテゴリーの医療ができたことも事実。その意味では、自由診療の再生医療の有効性について、医療機関が“正しく”伝えるよう、もっと後押しする必要があるのかもしれません。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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