【日経バイオテクONLINE Vol.2714】

医療経済性評価は医薬品R&Dにプラスかマイナスか?

(2017.06.30 08:00)
橋本宗明

 皆様、おはようございます。日経バイオテクの橋本宗明です。

 7月10日にゲノム編集が生み出す新ビジネスというテーマでセミナーを開催します。まだまだ参加者募集中ですので、ぜひ参加をご検討ください。

https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/info/sl/17/05/29/00036/

 ところで、厚生労働省の中央社会保険医療協議会に費用対効果評価専門部会が設けられて、医薬品の費用対効果評価の制度化が議論されているのは皆様ご存じのことかと思います。費用対効果制度の導入は、6月初旬に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2017」(いわゆる骨太の方針)にも、「費用対効果評価の本格導入などの薬価制度の抜本改革等に取り組み、『国民皆保険の持続性』と『イノベーションの推進』を両立し、国民が恩恵を受ける『国民負担の軽減』と『医療の質の向上』を実現する」と明記されており、来年度から何らかの形で制度が導入されることになりそうです。

 費用対効果評価制度の導入が、具体的にどのような品目に対してどのような影響を及ぼすかは、今後の制度設計の議論を待たなければわかりませんが、この制度が企業における研究開発方針やテーマの選定などに大きな影響を及ぼすのは確かでしょう。場合によっては、「費用対効果の評価が低くなりそう」という理由で中止に追い込まれるテーマも出てきそうです。

 一方、先日、とある省庁の研究開発プロジェクトに関する議論に加わる機会があったのですが、「研究テーマの選定時には医療経済性を考慮すべき」という意見が出ていました。恐らく医薬品や医療機器を視野に入れた国の研究開発プロジェクトにおいても、費用対効果や経済性という観点が今後、強く意識されることになると思われます。

 もちろん、医療保険財源に限りがあることを改めていうまでもなく、医薬品や医療機器に対して社会が受け入れ可能な価格を設定するべきというのはその通りだと思います。ただし、研究開発のあまりに早い段階から経済性を強調すると、将来の技術革新の芽を摘んでしまうことにならないかが気になります。

 一方で、例えばドラッグリポジショニング的な内容の場合などに、「この薬は既にこんなに安い薬価が付いている薬なので、別の適応で開発しても投資を回収できない」といって、開発に乗り出す企業がなかなか現れないといった話もよく耳にします。費用対効果評価の概念を取り入れると、このような医薬品も「効果」に見合った適正な価格が設定されることになるのでしょうか?

 費用対効果制度が固まり、実際の運用がスタートしなければ見えてこないこともたくさんありますが、費用対効果が医薬品の研究開発にどのような影響を及ぼすのかを、しっかりと注視していきたいと考えています。本日はこの当たりで失礼します。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

PR・告知製品・サービス一覧人材・セミナー・学会一覧