【日経バイオテクONLINE Vol.2702】

アカデミア研究者に重要な文科省科研費の改革をどう捉える?

(2017.06.14 08:00)
高橋厚妃

 皆さま、おはようございます。日経バイオテクの高橋です。文部科学省と日本学術振興会は、2017年6月8日、科学研究費助成事業の改革(科研費改革)説明会を東京大学の安田講堂で開催しました。科研費は、文部科学省の予算から捻出されている、基礎研究から応用研究までを支援する競争的資金。2017年秋に公募を開始する2018年度科研費から、審査方法や支援の枠組みが大きく変更されます。科研費は、ほとんどのアカデミアの研究者にとって重要な資金源です。安田講堂には2階席まで満席で約1000人の研究者が集結しており、関心の高さを感じました。

 今回の科研費改革の必要性や、改革内容の詳細については本誌のニュースや寛和久満夫氏によるコラムを参考にしていただきたいと思いますが、私がこの説明会で強く感じたのは、「新しい研究アイデアが切に求められている」ということです。また、捉え方は状況によっては異なるかもしれませんが、若手研究者への期待を感じました。

 従来若手研究者向けの科研費は、研究費総額によって、500万円以上3000万円以下の支援なら「若手研究A」、500万円以下の支援なら「若手研究B」という2種類がありましたが、今回の科研費改革によって、若手だけを対象とする科研費の枠組みは、500万円以下の1つになります。若手Aが無くなる分、若手には高額研究費を獲得する機会が少なくなるのではと思われる人がいるかもしれませんが、若手の枠組みが1つになった経緯を追うと、若手研究者Aが、従来中堅層も助成対象としていた「基盤B」という種類の科研費に統合されるということが分かります。しかも基盤Bは、もし同じ評価の研究内容であれば、若手を優先的に採択することになっています。若手を中堅層と競わせ、科研費で採択される研究者の新陳代謝を促すのが目的です。切磋琢磨し、新陳代謝が進めば、新しい研究アイデアが生み出される可能性も高くなるでしょう。若手は、若手研究者枠の中だけで評価される存在ではなく、積極的に競争を挑む存在になってほしいという期待を感じたのはそのためです。

 もちろん、若手は論文実績の多さなどで中堅層に届かないことがあるかもしれません。実際、科研費説明会の質疑応答でもそれを心配する声が上がりました。しかし、「論文の実績で採択を決めているわけではない。あくまで研究の内容で評価している」との回答があったことをお伝えしておきます。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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