【日経バイオテクONLINE Vol.2694】

抄録集の新しい可能性を感じたNGS現場の会

(2017.06.02 08:00)
山崎大作

 日経バイオテク副編集長の山崎大作です。

 先日、仙台市で開催されたNGS現場の会 第五回研究会に参加してきました。「NGS現場の会」は次世代DNAシーケンサー(NGS)にフォーカスし、技術者や医療従事者、企業など様々な現場の人々が情報交換を行っていくために設立された研究会です。

 868人の参加者を集めた同研究会で、特に目立ったのは手のひらサイズでノートパソコンと接続して使う米Oxford Nanopore Technologies社のナノポアDNAシーケンサー、MinIONを活用したセッションでした。会場でシーケンシングを行うという、既存のNGSでは考えられないセッションでは、立ち見者が出ただけではなく、部屋に入りきれずに廊下で見る人も出ていたほど。生物サンプルの持ち出しにうるさい国にMinIONを持ち込んで解析するなど、NGSの新たな可能性を感じました。近々、MinIONへの驚きについては改めてご紹介したいと思います。

 実は今回のメールマガジンで紹介したかったのは、MinIONの話ではなく、研究会の抄録集です。淡い青色でポップなデザインの表紙で、招待演者とスポンサードセッションについては要旨が掲載されているものの、各セッションについてはタイトルの掲載のみ。その代わり、冊子には「ヒト」「産業」などテーマごとに、現在現場で議論されていること、直近の課題と展望、キーワード、主催者側によるセッションの紹介が掲載されていました。抄録集めというよりも、雑誌、フリーペーパーをほうふつとさせる構成となっていました。

 今回の抄録集について大会長を務めた荻島創一東北大学東北メディカル・メガバンク機構の医療情報ICT部門准教授に話を聞くと、「要旨を閲覧できるオンラインやスマートフォンの専用アプリがあれば、紙の抄録集はいらないよねという声が増えていることに対する答え」との回答が。「人が集まる以上、自分たちがどういうフェーズにあって、何が問題で、何に取り組むべきかを共有する場を作りたかった。論文や研究の話だけならば、論文を読めばいい話」(荻島准教授)というわけです。確かにスマートフォンやタブレットの普及が進む中、重く、検索性に難のある紙の抄録集を持ち運ぶよりもアプリの方がいいよな、と私も感じていましたし、これならばアプリがあっても紙の抄録集も手元に置きたくなります。

 発表者から原稿を集めて作る冊子と比べて、荻島准教授をはじめとした運営スタッフの方々には負荷がかかっていたのではないかと思います。安易に他の学会でもまねをしてほしい、とは言い難いですし、読み物としても改善の余地があると感じました。ただ、それでも抄録集の電子化が進む時代に、一つのモデルといえるのではないでしょうか。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

PR・告知製品・サービス一覧人材・セミナー・学会一覧