【日経バイオテクONLINE Vol.2689】

再生医療の早期承認めぐる日米の制度はこんなに違う!

(2017.05.26 08:00)
久保田文

 おはようございます。日経バイオテク副編集長の久保田です。

 まずは、5月24日に配信したメルマガ「周知の徹底がまだ必要か自由診療下での再生医療」に誤りがあり、訂正をいたしましたので、ご報告させていただきます。訂正内容は、下記からご確認ください。
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/mag/btomail/17/05/23/00216/

 先々週、米国ワシントンD.C.で開催されていた米遺伝子細胞治療学会(ASGCT)年次総会を取材してきました。海の向こうでは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを使った遺伝子治療の研究開発が花盛り。昨年の同学会では他のウイルスベクターを使った演題も目立ちましたが、今年はAAV一色なのが印象的でした。ゲノム編集を使った遺伝子治療の演題も、マウスばかりから、霊長類を使った研究も出てくるように。会場では「2018年には、何らかのゲノム編集を使った遺伝子治療が臨床試験入りするのでは」とささやかれていました。

 ASGCTのレビューについては、改めて記事をまとめる予定ですが、今日は同学会で米食品医薬品局(FDA)生物製剤評価・研究センター(CBER)組織・先端治療部門(OTAT)の責任者が詳細を説明した米国の再生医療の早期承認を支援する制度と、日本の再生医療等製品の条件及び期限付承認制度との違いについて、私なりの解釈をお伝えしたいと思います。

FDA、21世紀医療法での再生医療の迅速承認支援制度について説明
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/05/14/02691/

 米国において、2016年末に成立した「21st Century Cures Act(21世紀医療法)」に基づいて、新たに設けられた再生医療先端治療(Regenerative Medicine Advanced Therapy:RMAT)指定制度は、日本においてしばしば、「日本の再生医療等製品の早期承認と同様の制度だ」と表現されています。確かに、(1)再生医療を対象(日本は遺伝子治療も対象)にしており、(2)それらの早期承認を後押しする制度である――という“方向性”は、両者に共通します。しかし、制度の詳細を比べてみれば、およそ同様の制度とは言えません。講演後にOTATの責任者に取材したところ、彼自身も「両者が同様の制度であるというような誤解がある」と認識しているようでした。

 では、両者の違いは何か――。私は2つの点で、RMAT指定制度と条件及び期限付承認制度は異なると考えています。

 1点目は、米国では再生医療製品がすべて対象になるわけではないという点です。日本の条件及び期限付承認制度は、再生医療(または遺伝子治療)であれば対象になり、臨床試験で安全性を確認でき、有効性が推定されれば早期承認が得られるというものです。しかし米国のRMAT指定制度は、再生医療のうち、重篤な疾患を開発対象にしており、かつ、有効性について予備的な臨床上のエビデンスが示されている品目だけが指定の対象になります。

 2点目は、承認の基準です。米国では、RMAT指定を受けたことが、即、早期承認につながるわけではありません。RMAT指定をうけた品目は、ブレークスルーセラピー(BT)指定を利用できるわけですが、承認については、医薬品など他のBT指定品目と同様、可否が決まるという立てつけです。つまり、再生医療だからといって承認のハードルが下がるわけではなく、あくまでBT指定品目として審査が行われるわけです。

 FDAでは、2017年1月からRMAT指定の申請を受け付け始めましたが、「有効性について予備的な臨床上のエビデンスが示されている」という要件を満たせず、指定を拒否される品目が相次いでおり、こうした状況からみても、「日本と同様」というのは難しそうです。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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