【日経バイオテクONLINE Vol.2672】

日本でバイオベンチャーが大きく育つには?

(2017.04.28 08:00)
久保田文

 みなさん、おはようございます。日経バイオテクで副編集長を務めております久保田です。

 全国各地ベンチャー行脚の日々が続いています。日経バイオテクでは現在、国内のバイオベンチャーを網羅する書籍の発刊を目指し、記者総出で取材&執筆中。日経バイオテクONLINEで、その一部をご覧になった方もいらっしゃると思います。

「ベンチャー探訪」の記事一覧はこちら
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/021500017/

 ベンチャー企業を回っていると、大手の企業ではなかなかお目にかかれないエピソードに出くわすことも少なくありません。癌治療薬の開発を手掛けるあるベンチャー企業の経営者からは、こんな話を聞きました。資金的にかなり苦しい状況下、提携に向けた最後のチャンスと新薬候補を提供し、製薬企業に頼み込んで有効性を評価してもらったそうです。

 製薬企業のモデルマウスの評価系はかなり厳しいもので、ポジティブな結果が出る望みは高くありませんでした。そこでその経営者は、会社の近くにある大きな神社に通い、新薬候補を投与されたマウスの延命を祈願。ただ手を合わせるだけではなく、願い(マウスの延命)を書き込んだ札を祈祷で読みあげてもらったとか。その結果、祈りが通じたのか、有意に新薬候補が癌を抑制し、生存期間が延長する効果が認められました。

 また、食品の培養技術を開発するあるベンチャー企業の経営者からは、研究成果(培養技術)をニコニコ超会議(動画提供サービス企業が主催するオフラインミーティング)で発信して、世界の人たちに同様培養技術でいろいろな細胞を培養してほしいという話を聞きました。食品という出口の性格上、特許を取得して囲い込むのではなく、オープンソースで培養技術を共有し、理解を得ていこうという戦略のようです。

 最近は、スタートアップのベンチャー企業に資金を出すベンチャーキャピタルが増えていることもあり、バイオベンチャーの数はいつになく増えているように思います。同時に、20歳代、30歳代の若手研究者が、自身の研究成果を社会に役立てたいと、起業するケースが目立ちます。人材の多様性がぐっと高まりつつある印象です。

 ベンチャー企業を取材していて、「日本でバイオベンチャーが大きく育つには何が必要か」としばしば質問されるのでいろいろ考えているのですが、何が当たるか分からない中で、企業の絶対数と人材の多様性は、最低限必要な条件ではないでしょうか。もちろん、サイエンスに基づいた事業を手掛ける、という大前提があっての話です。その点では、日本のバイオベンチャーの「企業数」と「多様性」は、正しい方向に向かって発展していると言えるのかもしれません。

 なお、取材させていただいた以外のベンチャー企業の方々に、問い合わせフォームから、事業内容などに関するアンケートへの協力のお願いをお送りさせていただいております。

 ご確認の上、ご協力いただければ幸いです。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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