【日経バイオテクONLINE Vol.2657】

探索研究で「○○はやらない」と発信する意義

(2017.04.07 08:00)
久保田文

 おはようございます。日経バイオテク副編集長の久保田です。

 まず初めに、最近執筆した特集についてです。3月27日号の特集「異種移植の研究開発最前線」はお読みいただけましたでしょうか。取材を通じて私が最も感じたことは、再生医療の研究開発にとって異種移植から学ぶことは多いということです。異種移植は関係ない、と思っていらっしゃる方にこそ、ぜひご一読いただきたいところです。

特集「異種移植の研究開発最前線」
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/082400016/032200021/

特集連動◎東大医科研中内氏、「キメラブタにチンパンジーの膵臓作る研究開始へ」
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/03/22/02487/

特集連動◎京都大上本教授ら、ヒト肝臓の一部をブタで再生させる異種移植に挑戦
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/03/22/02486/

特集連動◎鹿児島大山田氏ら、ブタヒヒ間の腎臓移植で6カ月間腎機能維持に成功
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/03/22/02485/

特集連動◎国際医療研究センター霜田氏、「異種膵島移植の臨床試験へ要素そろった」
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/03/22/02483/

特集連動◎京都大角氏、異種膵島移植向けカプセル化技術でクラレと共同研究中
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/03/22/02484/

 さて、ここ数カ月の間、国内外、複数の製薬企業の研究開発方針について伺う機会がありました。規模の大小はありますが、偶然、そのほとんどの企業が中枢神経疾患、中でもアルツハイマー病の治療薬開発を目指して、探索研究を行っていました。

 ただ、数年前と違うのは、「アミロイドβ(Aβ)はやらない」「AβやTauについては、開発中の品目だけにして、探索研究ではAβやTauはやらない」という声が聞こえてくることです。どこも、これまで幾度となく実施された臨床試験の結果などを含め、そうした決断を下しているというわけです。

 実は最近、探索研究に関して「○○はやらない」という話を聞くことが増えています。

 背景には、製薬業界全体に重点領域を絞り込む動きが加速していることが挙げられます。実際には、重点領域のうち注力する疾患や病態を限定し、さらには病態の中でも標的とするパスウェイを選別して研究を進めているという具合でしょう。創薬の難易度が増す中で、あれもこれも手を付けたのでは、病態のバイオロジーを深く理解し、適切なモダリティを選択し、安全性を見極めながら新たな開発品候補の創製に結び付けることなどできないということなのだと推察しています。

 もっとも、バイオロジーの深い理解が重要という話は昔からあるわけで、探索研究で「○○はやらない」と決めることは、最近始まったわけではないと思います。ただ、製薬業界で外部のアカデミアやベンチャー企業からシーズを導入することが一般化する中、自分たちの立ち位置、考え方を伝える手段として、外部に対して「○○はやらない」というメッセージを出すことの意義が高まってきたのではないでしょうか。よりよいシーズをより早く評価する機会を得るために、あえて「○○はやらない」と発信する。オープンイノベーションの波は、いろいろな形で業界に変化をもたらしていると言えそうです。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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