【日経バイオテクONLINE Vol.2647】

日本の科学研究の失速を運営費交付金のせいだけにしてよいのか

(2017.03.24 08:00)
山崎大作

 日経バイオテク副編集長の山崎大作です。

 先日、全国紙の元科学担当編集委員と話をしていた際、今後の科学に関するノーベル賞の授賞の可能性の話題となりました。大阪大学の坂口志文教授など、日本人の名前も数人上がっていたのですが、それらの研究者は以前から候補に「リスト化」されていた方々ばかり。「日本人で新たな名前は近年入っていないね」というところで話を終えていたのでした。

 さて、Nature2017年3月23日号の特別企画冊子「Nature Index 2017 Japan」では、68誌の自然科学系学術ジャーナルの論文著者の所属機関を分析したNature Indexの日本に関する結果を掲載しています。「日本の科学研究はこの10年間で失速している」というネイチャー・ジャパンのプレスリリースを受けて新聞各紙もこぞって報道していたため、目にされた方も多いことでしょう。Nature誌に掲載された原文をみても、「今後10年間でアウトプットを増やせず、質の高い科学を育むことができなければ、世界トップレベルの研究国としての地位を失うリスクがある」ときつい表現がなされています。

 Nature Indexに収録された科学論文のうち、日本から投稿された割合は2012年から2016年までに6%下落。日本の著者の論文数は8.3%減少していたそうです。また、同期間の日本の貢献度は19.6%低下したとしています。この原因として、Natureは、日本の研究者がフルタイムで働くことができるポジションが少なくなっていること、日本政府の研究開発支出額が2001年以降ほぼ横ばいであることを挙げています。

 数日前に話していたことが、改めて数字でも裏付けられる形となり、寂しく感じた次第です。

 もっとも、個人的には「だから運営費交付金など研究機関に投入する公的資金を増やせ」と単純に論を張ることに対しては反対です。既に日本の名目GDPは90年代に入って横ばいを続け、2009年以降は中国に抜かれて世界3位になっており、今後も大きな成長は期待できません。予算の組み替えでしか公的資金の原資を捻出できず、調達は簡単ではないでしょう。である以上、今回のNature Indexは政府から予算を引き出すための道具に使うのではなく、民間からの資金調達や大学の人事制度改革を加速させることに知恵を絞れ、というメッセージと受け止めるべきではないでしょうか。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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