【日経バイオテクONLINE Vol.2638】

オートファジーと癌の進化とアイデアソン

(2017.03.10 08:00)
橋本宗明

 皆様、おはようございます。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 先週末から今週に掛けて、バイオ関連の様々なイベントに参加する機会が続いています。今週月曜日には、日経バイオテクの主催、横河電機協賛のプロフェッショナルセミナー「オートファジーを標的とする創薬、化粧品開発の可能性」を開催し、パネルディスカッションのモデレーターを務めさせていただきました。

オートファジーセミナー、論文だけ信じると研究の方向性を誤る危険性も
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/03/07/02402/

 オートファジーは、測定技術がまだまだ開発途上であるなど、創薬などに大きく貢献し始めるまでには課題も多いですが、一方で、様々な疾患や生命現象に関わっていて、非常に興味深い分野だと痛感しました。そして何よりも日本の研究が世界を大きくリードしている分野であるわけですから、基礎的な研究段階とはいえ、アカデミアと企業が歩み寄って実用化を見据えた研究を進めていくべきではないかと思います。機会があれば第2弾、第3弾のセミナーも企画しますので、ご要望があればお教えください。

 先週土曜日には、ある研究会で京都大学大学院生命科学研究科の石川冬木教授のお話を聞きました。染色体やテロメア、細胞老化、ストレスと癌などの研究で世界的にも有名な先生で、これまで講演を聞く機会は無かったのですが、この日は「癌細胞がライオンに出会うとき」という魅力的なタイトルの講演で、しかも専門家以外に向けた分かりやすい内容だったので、非常に面白かったです。講演の詳細はここでは触れませんが、癌が悪性化したり、様々な治療に対して耐性を獲得していくのは、ダーウィン進化に類似しているという指摘は、なるほどと思わされました。つまり、癌は常に体内で発生しているものの通常は様々なストレスを受けて死滅しているわけですが、環境からのストレスをかいくぐって進化しながら悪性化したり、耐性を獲得したりして生き延びるものが登場して、問題になっているというわけです。そして、そこに着目した新しい抗癌剤のアイデアなども紹介いただきました。ちなみに、石川先生の話とは関係ありませんが、多くの癌細胞においては前述のオートファジーが亢進していることが知られており、海外ではオートファジーを阻害する抗癌剤の臨床開発も進められています。この日の講演と、月曜日のセミナーの講演を聞いて、オートファジーは癌の進化、耐性の獲得などにも何らかの形で関わっているのではないかと思いました。

 火曜日は、新しいゲノムサービスを考案しているあるベンチャー企業が開催した「アイデアソン」というイベントに参加させてもらいました。「ハッカソン」という言葉は聞いたことがありましたが、その内容はよく分かっておらず、ましてやアイデアソンと聞いて、いったい何をやるのだろうと興味が湧いて参加したわけです。一口で言うと、参加者が課題に対するアイデアを提案しあうワークショップといったところでしょうか。企画する側とすれば、短時間で参加者からアイデアを募る手法として、オープンイノベーションなどに活用できそうです。いずれこのようなイベントを、編集部で企画していければ面白いのではないかと思いました。

 そして、水曜日は仙台で開催中の第16回日本再生医療学会総会を取材させていただきました。他の用件があって1日だけの参加となりましたが、幾つかシンポジウムを取材しました。今回の再生医療学会総会のトピックスの1つに、再生医療ナショナルコンソーシアム事業があります。これは日本医療研究開発機構(AMED)の委託を受けて、再生医療学会が実施するもので、再生医療の臨床研究の対象患者を登録する再生医療等臨床研究データベース「RMeD-Japan」の構築などを進めます。再生医療は研究と実用化の距離が近い分野だけに、臨床研究だけでなく、治験や市販後調査なども視野に入れたデータベースとして整備していくことが期待されます。

再生医療学会、臨床研究の対象患者を登録する疾患別レジストリを構築へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/02/17/02326/

 本日はこの当たりで失礼します。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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