【日経バイオテクONLINE Vol.2631】

国家と州で再生医療に力を入れるカナダ・オンタリオ州の強みは何か

(2017.03.01 08:00)
高橋厚妃

 皆さま、おはようございます。日経バイオテクの高橋厚妃です。2017年2月27日から、カナダ・オンタリオ州のトロントを訪問中です。日中でも5℃、夜はマイナスの気温で、割と風が強く、雪が舞ったりしていて体感温度はかなり寒いです。ここで何をしているかというと、カナダの連邦政府やオンタリオ州政府が力を入れている、再生医療の研究開発を取材しています。

 カナダは、10の州と3つの準州から成る連邦国家です。カナダ連邦政府の他に、各州政府の自治権が確立されています(準州は連邦政府の直轄で、自治権は無い)。2017年は、連邦国家となって150周年の記念の年だそうで、トロントの駅などで150周年を祝うポスターを見かけます。各州に自治権があるため、大学や研究機関などに対する研究開発費には、カナダ連邦政府に加えて州政府が独立した予算を配分することが可能で、州の特色が出やすいといえます。オンタリオ州は、カナダ最大の都市であるトロントを有しており、昔から幹細胞の研究開発に予算を投じてきました。1960年代初めに、オンタリオ州にあるカナダUniversity of Torontoに在籍していたJames E. Till博士とErnest A. McCulloch博士が、マウスの造血幹細胞を初めて発見したことなどが起源のようです。

 このような背景もあり、昔からオンタリオ州の各大学や研究機関では、幹細胞や再生医療研究が活発になされてきたわけですが、2011年に大きな転機が訪れます。オンタリオ州政府だけではなく、カナダ連邦政府などの支援が加わって、トロントに、再生医療のトランスレーショナルリサーチを行う再生医療商業化センター(Commercialization of Regenerative Medicine:CCRM)が設立されたのです。当時、カナダ連邦政府が設立資金として付けた予算は1500万カナダドル(当時約14億円)と言われています。
日経バイオテク2013年7月15日号「リポート」、カナダ・トロントのCCRM
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20130717/169629/

 そして現在――、2015年にカナダ連邦政府の新しい首相としてJustin Trudeau氏が就任し、連邦政府がさらにオンタリオ州トロントの再生医療にてこ入れしているというのです。2016年1月、カナダ連邦政府は、トロントにあるライフサイエンス分野のインキュベーション施設MaRS Discovery District内に、細胞医薬用の製造施設を設立することを表明。カナダ連邦政府と米GE Healthcare社、カナダCCRMと共同で、合計4000万カナダドルを支援することを発表しました。この施設は、2018年に開設予定で準備を進めています。オンタリオ州政府だけではなく、カナダ連邦政府、そして企業や研究機関がそれぞれ出資をして、再生医療の新しい開発体制が拡大しています。再生医療の予算が集まるトロントに滞在し、オンタリオ州の再生医療の強みを見てまわってきたいと思います。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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