【日経バイオテクONLINE Vol.2628】

UMNファーマ、「完全に納得しているわけではない」ならまず情報公開を

(2017.02.24 08:00)
久保田文

 おはようございます。日経バイオテク副編集長の久保田です。2017年2月22日、都内でUMNファーマの2016年12月期決算説明会が開催されました。UMNファーマは、アステラス製薬と共同開発していた季節性インフルエンザを予防する細胞培養インフルエンザワクチンUMN-0502(ASP7374)について、アステラス製薬が承認申請を取り下げ、開発を中止したことで窮地に立たされています。

 説明会の質疑応答で、平野達義社長は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が、UMN-0502についてリスク・ベネフィットの観点から臨床的意義が乏しいと判断した(とされる)ことに触れ、「(承認申請していた)アステラス製薬とPMDAとの議論の内容は、アステラス製薬が認識しているレベルで聞いてはいる」として、PMDAの判断の内容について把握していること明らかにしました。ただし、その主旨について平野社長は「なぜ、PMDAが今回のような判断をしたか、完全に納得しているわけではない」と発言。腑に落ちない部分があることもにじませました。

 もっとも説明会では、PMDAの判断の詳細や根拠について、UMNファーマが説明することはありませんでした。弊誌では、2016年9月から、UMN-0502の審査長期化の背景に昆虫細胞を用いた生産系(Baculovirus Expression Vector System:BEVS)があるのではと報じてきました。昨日の説明会では参加者から「認可されない理由について、もっと核心に触れて説明しなければならないのでは。BEVSは実用化できないのではないか。御社の信頼の問題に深く関わる」と厳しい指摘が飛びましたが、平野社長は、「その記事は承知しているが、記事自体がPMDAの審査に影響しているかは不明」と話すにとどまり、なぜPMDAが臨床的意義が乏しいと判断したのかについて、詳細は分からずじまいでした。

UMNファーマ、組換えインフルワクチン審査長期化の背景に昆虫細胞株
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/09/29/01609/

 米国では認められているワクチンについて、日本でなぜ承認申請を取り下げ、開発中止を決めたのか、承認申請したアステラス製薬も、「総合的な状況から承認取得は難しいと判断した」と話すにとどまっており、今後も、PMDAから見て、UMN-0502の何がいけなかったのか、何が足りなかったのか、詳細が明らかになることはなさそうです。しかし、もしワクチンの生産に使うBEVSが主因なのであれば、「臨床的意義が乏しい」という判断は、インフルエンザワクチンに限らず、同じBEVSを使う他のワクチンにも波及する恐れがあります。

 質疑応答で、参加者からは「投資家を保護する観点からも、もっと情報を出すべきだ」との声が飛びました。というのもUMNファーマはこれまで、UMN-0502の審査が長期化している理由について、説明を求められるたびに、「有効性などの問題ではないと認識している」「審査対応を継続している」と話すにとどまり、投資家の「なぜ?」という疑問に応えてきませんでした。その上、今回のような事態になってもなお、詳細を明らかにしていないわけですから、こうした声が出るのも当然です。そして、個人的にはそれに加えて、「レギュラトリーサイエンスの観点からも、もっと情報を出すべきだ」と思っています。

 もちろん、今回のPMDAの判断がおかしいというつもりはありません。ワクチンの安全性に対する考え方も、国によって異なりますので、当然、リスク・ベネフィットの大きさも違ってきます。ただ、そうした判断の根拠には明確な線引きがあるわけではなく、社会の要請によって、時代の変化によって、科学の進展によって、その時その時で、レギュラトリーサイエンスの在り方は適当なところに落ち着くものだと考えます。もし、平野社長が、「完全に納得していない」と言うのであれば、その内容をつまびらかにし、判断の根拠が適当だったのかどうか、業界や社会全体で共有・議論すべきではないのでしょうか。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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