【日経バイオテクONLINE Vol.2623】

医薬品承認審査制度自体の効率性も問われている

(2017.02.17 08:00)
橋本宗明

 皆様、おはようございます。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 日経バイオテクONLINEの好評連載の1つに、元厚生省大臣官房審議官で、医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団の理事長である土井脩さんに、昨年1月から寄稿いただいている「厚労行政を斬る」があります。2/16に公開したその最新記事で、非常に重要なことを指摘されているのでぜひお読みください。

合理的な新薬開発や承認審査を我が国は実現できるか
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/012600003/17/02/15/00016/

 簡単に内容を紹介しますと、医薬品や医療機器などの価格高騰が指摘され、その費用対効果が問われる時代を迎える中で、製品価格の高騰の一因となっている開発段階のコストを抑えるために、医薬品規制当局としてなすべきことはないかを問い掛けたものです。具体的に引用すると、「従来型の対照群を置いた大規模臨床試験は豊かな時代の産物」「大規模臨床試験でなければ有意差を出せないような新薬は、恐らく医療上の意味はなくなる」「大規模臨床試験によりまれな副作用を見つけ出すやり方も豊かな時代の医薬品規制当局による贅沢であり、今後は市販後のデータ収集にゆだねる時代となる」「民族差に注目した臨床試験も、個別化医療、精密医療の前にはその必要性は薄くなり、むしろ、市販後の安全監視にゆだねるべき」などと指摘しています。一律の使用成績調査や医療現場からの副作用情報の収集に見直しを求め、「新薬の審査を日米欧で繰り返す無駄を大胆に見直すべき」とも指摘しています。

 私が知る限りでも、医薬品行政において安全性の確保は金科玉条で、様々な議論はあっても、安全性に関する規制は原則強化される方向で修正されてきたと思います。その安全性をないがしろにしてよいとは思いませんが、医療保険財政が国家財政を圧迫し、製品に対して費用対効果が求められる中で、規制そのものに対しても効率性が問われているということなのでしょう。

 医薬品の価格の議論はともすると個別の製薬企業の問題のようにとらえられがちですが、医薬品の価格が高騰する背景には、過剰な規制であったり、医療制度そのものの非効率性の問題があったりします。たたきやすいところだけをたたいてよしとするのではなく、制度全般を大胆に見直す契機としていただくことを期待します。

                            日経バイオテク 橋本宗明

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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