【日経バイオテクONLINE Vol.2621】

有効で、安全に、より安価にマイクロRNA検査に医療費削減の期待

(2017.02.15 08:00)
小崎丈太郎

 免疫チェックポイント阻害薬の薬価が半分になったことについては、なお賛否両論、甲論乙駁あるようですが、今回の件で明らかになったことは、創薬の研究開発の目標に有効性と安全性に加え、経済的であることが加わったことです。「有効性と安全性が同等で薬価が高い薬は新薬であっても、院内から申請があっても採用しない」。日本赤十字医療センターではそのように決定したそうです。お気づきと思いますが、免疫チェックポイント阻害薬の高額薬価問題の先鞭をつけた国頭英夫先生が化学療法部長を務めておられる病院です。

 臨床開発のフェーズでは免疫チェックポイント阻害薬の副作用対策やバイオマーカーの探索が重要なテーマですが、製薬会社の創薬研究所では高価な抗体医薬を安価な低分子化合物などで代替できないか、検討が始まっているようです。高額薬価の批判に研究開発で応えようという戦略です。

 全世界でマイクロRNAを癌の診断や治療に使う研究が白熱しています。日本でその研究の最前線にいる国立がん研究センター研究所の落谷孝広・主任分野長は、最近マイクロRNA診断により大腸癌を早期診断した場合の経済効果を試算しています。

 進行癌で発見され、手術による摘出を受け、その後で肝転移が見つかり肝切除を実施。数年後にリンパ節転移が発見され、抗癌剤による治療を受けたが、7年後に死亡した患者さん……。このような患者さんのケースでは国立がん研究センター中央病院の医師らの試算では、治療費は総額1100万円にも達するそうです。もしマイクロRNA検査により大腸癌のリスクが判定でき、内視鏡検査によって2cm以下の早期癌を発見できた場合、当然切除治癒となります。マイクロRNA検査によるフォローアップを3回行ったと仮定した場合ですが、こうしたケースでは治療費の総額は9万4600円だそうです(マイクロRNA検査を2万円と想定しています)。

 経済性を追求するあまり有効性や安全性をないがしろにすることはできませんが、その技術の経済性について評価することは、研究開発を進めるにあたって必須のプロセスになるのではないでしょうか。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

PR・告知製品・サービス一覧人材・セミナー・学会一覧