医療健康サイトにトンデモ情報が公開されていて、話題になっています。いろいろなニュースで象徴的に引用されたのが、「肩凝りの原因が幽霊である」という話ですが、こういう話は信じるヒトがいない(たぶん)ので罪は軽いです。医薬品の効果効能よりも副作用を過剰に強調して、医療行為の妨げになったことに比べれば、の話ですが。

 報道されているところでは、ライター・編集者にとって非常に薄利多売の環境下で記事が生産されていたようです。ネット上では多くの無料情報が氾濫しています。小生もパソコンやスマートフォンの不具合に遭遇した場合に、そうした相談サイトを利用し、時には自力で、時にはITに強い同僚の力を借りて、問題解決に務めるのが常です。

 健康や疾病に関する情報も基本的にこうしたパソコンの不具合情報と同じ地平にあったようですが、医療・健康いずれにしても過不足なく正確な記事に仕上げるには、取材経験や適切な資料にあたるといった水面下の労働が必要です(自戒を込めてです)。当然、取材にご協力いただく専門家の方々の時間や研鑽した知識を含めて、コストがかかります。

 メディアを生業に生活している人間にとって、運営の費用をどのように捻出するかは大きな問題です。購読料や広告料という形でその費用をまかなってきた従来からのペーパーメディアの多くは、無料で情報を配信するネットメディアに蚕食されてきました。いまやネット広告は新聞や雑誌はおろか地上波テレビをも凌駕しています。

 というようなことをあてどなく考えていた先日、大学の研究者が一般人からクラウドファンディングによって研究資金を獲得するための仲介サイト(アカデミスト)の運営者を取材する機会を得ました。
 研究者がプレゼンし、研究資金の希望金額を提示すると、共感した方々や身近な人々が資金を提供するというサイトで、集まった資金が希望した金額に達した場合にその20%をサイトの運営費に回すというものです。詳しくは日経バイオテクONLINEで紹介しますが、同氏がそのサイトを立ち上げた目的は「全国の大学には独創的な研究テーマを独創的な方法で追究している多くの研究者がいることを知ってほしかったから」でした。

 つまり、このサイトは新しい科学ジャーナリズムだったのです。

 創立者でアカデミストの社長は自らHTMLを書き、独力でサイトを立ち上げました。そして、全国の研究者たちと利益を分け合う仕組みを立ち上げました。取材を終え、購読料か広告費かの二項対立に縛られてきた己の脳の不明を恥じつつも、何か爽快な気分と共に帰社しました。