おはようございます。日経バイオテク副編集長の久保田です。本日は、本題に入る前にまずは、どなたにもご参加いただけるアンケート調査へのご協力のお願いです。

 今年もあっという間に師走――。振り返ってみれば、国内製薬企業の重点領域の絞り込みラッシュから始まり、東京工業大学大隅良典栄誉教授のノーベル生理学・医学賞の受賞決定、小野薬品工業の「オプジーボ」(ニボルマブ)の超法規的薬価下げと、製薬・バイオ業界では様々な出来事が起きました。

 そこで日経バイオテクでは、「バイオ村の住民投票」の一環として、業界の重大ニュースをランキングするためのアンケート調査を実施しています。編集部が厳選した今年のニュースの中から、“これは”と思うものにぜひ皆様の一票を投じてください!!

↓↓アンケート調査はこちらから↓↓

https://aida.nikkeibp.co.jp/Q/C027979yg.html

 さて、本題です。今年一年、私自身も様々な方々に取材させていただいたわけですが、個人的に最も勢いを感じたのは、というか、現在進行形で最も勢いを感じているのは、やはり癌免疫療法です。先月は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法(CART療法)と、T細胞受容体(TCR)遺伝子導入T細胞療法(TCR療法)の研究開発競争について、日経バイオテクに特集をまとめました。

特集◎新規癌免疫細胞療法の開発競争
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/082400016/111600012/

 本日午前にも、ある製薬企業のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を取材しましたが、新たな投資先として、癌患者別のネオアンチジェン(ネオ抗原)を標的とした自家TCR療法の開発を手掛けるベンチャーに出資を決めたと伺いました。また、本日午後に参加したアステラス製薬のR&D説明会では、同社の内田渡上席執行役員から、患者の腫瘍微小環境に応じ、それを制御するためのいくつかのアプローチが説明されました。

 一方で、今回特集を書いて一番痛感したのは、技術的な課題ではなく、行政的な課題です。具体的には、革新的治療法に見合った薬価を付けるための仕組みの必要性です。特にCART療法などの細胞療法は、スイスNovartis社が第58回米国血液学会(ASH)で発表したデータなどにあるように、非常に有望な結果が示されつつあります。

Novartis社、小児・若年の白血病を対象とするCART療法の中間結果発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/12/07/01994/

 しかし、こうした革新的な細胞療法について、費用対効果を評価した上で、価値に見合った薬価を付ける仕組みが日本にはありません。厳密に言えば、費用対効果評価の試行的導入はスタートしたものの、本格導入にはまだほど遠い状況です。そうした中で、国内では、「オプジーボ」の薬価が緊急に下げられました。その議論の中で指摘されたのは、海外との薬価の違いや、原価算定方式の課題、適応拡大に伴う薬価見直しの仕組みの必要性などでした。

 ただ思うに、非常に高い効果が認められ、海外で超高額な薬価が付けられた細胞療法が登場した時、海外の薬価が高いからと日本で同様の薬価が付くかというとそう簡単ではないでしょう。最近は取材先から、こうした懸念が漏れ聞かれることも増えました。持続可能性を保つことの重要性は言うまでもありませんが、薬価制度は単なる薬価を決めるためのルールではなく、「日本でこういう治療薬を開発して欲しい」「こういう治療薬が出てきたらこんな風に評価しますよ」という世界へのメッセージでもあるはず。薬価制度の改革では、少しだけでもこういう議論が交わされるといいなあ、と思っています。

 最後になりましたが、本年も大変お世話になり、ありがとうございました。引き続き来年も取材を通じ、読者の皆様のいろいろな発見や決断、様々な懸念を日経バイオテクを通じてお伝えできればと考えていますので、よろしくお願いいたします。